photo by gettyimages
金融・投資・マーケット 企業・経営

東芝新会長に内定「旧三井銀行のプリンス」その実力

経産省まかせの人事で大丈夫?

経営危機に瀕した東芝は、トップを外部から招へいし、再生を託す道を選んだ。元三井住友銀行副頭取で、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ日本法人会長を務める車谷暢昭氏(60)を、空席だった「代表執行役会長」兼「最高経営責任者(CEO)」として迎え入れる人事を、取締役会で決めたのである。

車谷氏は旧三井銀行の出身。三井住友銀行の頭取レースに敗れ、自ら外部に活躍の場を求めた人物だ。三井住友ファイナンシャルグループ会長を昨年4月まで務めた奥正之氏の下で、東京電力の救済(国有化)スキーム作りに奔走した実績があり、太いパイプを持つようになった経済産業省幹部らの推しを得て、今回の東芝入りが実現したという。

東芝の新CEO、車谷暢昭氏(左)と綱川智社長東芝の新CEO、車谷暢昭氏(左)と綱川智社長 photo by gettyimages

東芝は、経済産業省の主導により、目先の金繰りをつけるため、医療機器や半導体といった高収益部門を切り売りしてきた。成長力を支えていく柱が見当たらないだけでなく、収益を安定的に確保できるかどうかすら覚束ない状況だ。嵐の中で船出する車谷・東芝は、荒波を乗り越えていけるのだろうか。

 

53年ぶりの「大外科手術」だが…

歴史はくり返す――。東芝が外部からトップを招へいするのは、今度が4回目になる。

芝浦製作所と東京電氣が1939年に合併し、東芝の前身「東京芝浦電気製作所」が誕生した際の初代社長である山口喜三郎氏が最初。続いて、東芝を大混乱に陥れた労働争議を収拾するために、第4代社長に就いた元第一生命社長の石坂泰三氏。さらに、元石川島播磨重工業社長で、質素な暮らしぶりから「メザシの土光さん」と呼ばれた第6代社長の土光敏夫氏。車谷氏は戦後70年以上の歴史のなかで3人目。異常事態と言っていいだろう。

2015年秋。筆者はゆうちょ銀行の取締役をしている縁で、当時日本郵政社長に就いていた故西室泰三氏に、東芝の歴史を詳しく聞く機会に恵まれた。西室氏は第13代の東芝社長を務めた人物だ。

西室氏が強調したのは、「(外部からトップを招へいするほどの事態を含めて)何度も経営危機を乗り越えてきた東芝には、強力な復元力がある」という見解だ。経済ジャーナリストとしての立場から、東芝の経営危機の深刻さを憂うコラムを書いた当時の筆者に、西室氏は「よく理解してほしい」とくり返した。

あれから2年半あまり経ったが、十分に「強力な復元力」が発揮されたとは言いがたい状況だろう。それどころか、一時は事態が極度に深刻化。米原子力メーカーのウェスティングハウス・エレクトリック関連の不良債権がもとで債務超過に転落したほか、目先の危機回避を主眼にした東芝メディカル、東芝メモリーなどの売却に苦戦する事態もくり返された。

そして迫られた決断が、土光敏夫氏以来、実に53年ぶりとなる外部からのトップ招へいという「大外科手術」だ。この選択ですら、本格的な再建につながるかどうかはまだ予断を許さない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら