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オリンピック フィギュアスケート

羽生結弦が史上最高の「4回転バトル」を制する日

涙が出るほどいい試合だった

オリンピックの魔物に打ち勝った選手たち

この国において、また歴史的に見ても、フィギュアスケート男子シングルがこれほど注目されるのは、初めてではないか。それほどの異常な注目度、期待感のなかで始まった、平昌五輪男子ショートプログラム。

久しぶりに「いい試合を見た!」と、心から思える一戦だった。特に日本のエースふたりが揃ってミスなしの演技を見せ、会場が沸きに沸いた瞬間には、ちょっと涙が出そうになるほどだった。

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やはり凄まじかったのは、最終グループ6人の猛者、その全員が4回転ジャンプ2本とトリプルアクセル1本に挑戦し、うち4人もの選手がすべてを成功させてしまったこと。これだけの緊張感の中、ほとんどの選手にミスが出たとしてもおかしくはない。

華やかに喧伝されてきた「4回転時代」も、オリンピックの魔物が跋扈する中では、やはり見ごたえのある試合にならなかった、そんながっかりな展開もありえたのだ。選手たちが挑んだのは、それほど究極の挑戦、究極の戦いだ。

しかし彼らの鍛錬のたまものとして、最終組で乱舞したのはトウループ、サルコウ、フリップ、ループと、4種類もの4回転。羽生結弦やフェルナンデスの4回転サルコウは出来栄え点で+2.71と、ただ跳ぶだけでなく、クオリティも極めて高かった。

ここまで見せてくれれば、「4回転時代」も本物だろう。人類が初めて臨む過酷なフィールドでしのぎを削ってきた、トップスケーターたちの努力が大きく実を結んだこと。それをまずは喜びたい。

 

そしてやはり、日本の羽生結弦と宇野昌磨。彼ら二人がここまでの注目度の中、日本中の期待に答える演技を揃って見せてくれたことに、興奮せずにはいられない。

特に羽生は、4ヵ月も実戦から離れ、痛みもまだ抱えているだろう中、ここまでできるとは、正直思っていなかった。

日本のメディアは、相も変わらずメダル、メダルと煩い。オリンピックパークでも「金メダルを見に来ました!」などと大声で叫びながらテレビの取材に答えていた観客がいた。ふだんはフィギュアスケートなどまず見に来ない人だろうが、金メダルではなく、「羽生結弦の演技を見に来た」となぜ言えないのか。日本中の期待の的も、結局は彼らが何を見せるかではなく、彼らが何色のメダルを取るか、なのだろう。

その勢いで報道も、「羽生、好調」「連覇行ける」と、期待を煽る幼稚なほど前向きなものばかり。なぜ、現状が厳しいことをしっかり伝えて、ここまでハードな状況で戦う男がもし連覇出来たらどれほどすごいことか、それを伝えようとしないのだろうか。

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