画/おおさわゆう
医療・健康・食

優秀な医師が、妻から「役立たず!」と罵られる意外な瞬間

覆面ドクターのないしょ話 第4回
もし、自分の子どもが高熱を発して苦しみだしたら、しかもそれが乳幼児だったら、親はパニックに陥り、病院に駆け込むことになるだろう。でも、その病院にいるお医者さんでも、自分の子どもの発熱には同じようにパニックを起こすこともあるらしい。

小児科医以外の医師にとって子供は鬼門


「女性患者が来たら、まず妊娠と疑え」
「子どもは小さな大人ではない」

医学部の学生時代に、授業で先生から口を酸っぱくして教えられた教訓だ。

「女性患者が来たら、まず妊娠を疑え」とは、女性に対しては、必ず妊娠を念頭に診察をした方がよいという教えである。女性の腹痛を診察して妊娠を見逃し、命にかかわるような事態に陥ることもあるのだ。

さてもうひとつの「子どもは小さな大人ではない」について。

これは文字通り、子どもを小さな大人だと甘く見て診療・治療してはいけない、という教えだ。先ほど述べた「女性の腹痛」と同様なのだが、「小児の腹痛」はもっとやっかいだ。子どもは自分で訴えたり説明したりすることができないからだ。

子どもが小さな大人ではない一番の証拠は、脱水症の進行が速いことである。吐いたり下痢したりすると子どもは体調を崩しやすく、熱中症は特に注意が必要である。蒸し暑い日に出かけるときは、こまめに水分を摂らせ、いつもよりおしっこの量が多いくらいが安心だ。

さらに子どもの場合、問題になるのは、検査、治療、薬の量など色々ある。レントゲン検査は何とかなるものの、採血は簡単ではない。子どもの血管は細い。ただでさえ採血が難しいのに、そこに「暴れる」という悪条件が重なり、暴れる子どもを押さえつけて治療する「血も涙もないドクター」という罪悪感にさいなまれる。治療後には「ボクにチックンした悪いヤツ」と罵られ、子どもに嫌われるというオチが付く。点滴も同様。

薬の投与量に関しては、子どもを単に小さな大人だと思って2分の1、3分の1にして投与してよいかというと、そんなに簡単ではない。子どもは同じ年齢でも体格差があるし、年齢・体重・身長などを考慮して薬を投与する必要がある。

そういうわけで、小児科の診療は実に面倒なのである。もし私が自分の専門以外の科を診療しなければならないとしたら、一番やりたくないのが小児科だ。

 

私の知り合いにある新婚夫婦がいた。奥さんはOL、夫は医師で、同じ科の後輩である。この二人に子どもが生まれた。生後数ヵ月のある日のこと。奥さんが不安な声で夫に電話してきた。

「赤ちゃんの様子が変なの。ずっとぐずってて、ミルクも吐いちゃうし、触ったら体が何だか熱っぽいの」

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読者の皆さん、この光景を思い浮かべてみてください。この後、どんな展開になると思いますか? 夫が、ネプチューンの原田泰造みたいに、「俺に任せとけ!」と言ってくれたら、そりゃもう、安心……なのだが!?

新生・ブルーバックス誕生!