また5Gの整備で期待されているのが、VR(バーチャルリアリティ)の普及だ。VRは従来の映像コンテンツよりも没入感があるため、たとえばあるスタジアムで行われている試合を、遠く離れた場所で同じ臨場感を味わうことが可能になる。

5Gがあれば、それを同時に大量の人々と体験できるようになるため、パブリック・ビューイングがさらに盛り上がることになるだろう。

さらに映像と同時に、それを補足するような各種情報を送ることも可能になるため、たとえば前述の総務省資料では、「スポーツのライブ中継を見ながら、選手のパーソナルデータもリアルタイムで確認する」といったシーンが描かれている。

また5Gによってリッチなコンテンツを提供するだけでなく、その「大量の端末と安定した通信を行う」という特性を活かして、訪日外国人向けの対応を進めるというアイデアも取り上げられている。

たとえば各種端末とクラウド上のAI(人工知能)をつなぎ、リアルタイムで翻訳を行ったり、訪日客個人ごとにカスタマイズされた情報をデジタルサイネージ(電子掲示板)で提供したりといった具合だ。

この「無数の端末が、リアルタイムでAIとつながる」という点は、観光客だけが得られるメリットではない。

たとえば総務省資料では、デジタルサイネージで一般の人々にも情報提供したり、ウェアラブル端末を通じて運動を管理・計画したり、冷蔵庫が自動で中身を判断してレシピを提案したりといった世界が描かれている。

電話が賢くなったらどこまで便利になるか、私たちはスマートフォンで経験済みだ。5Gで家電や家具、衣服など、あらゆるものが賢くなったら、どれほど高度なサービスが可能になるのだろうか?

スマホがいらなくなる社会へ

極限すれば、5Gが普及した世界とは、「社会全体がロボット化した社会」と言えるだろう。そこではもはや、個人が端末を持つ必要がない。行く先々で、AIにつながった賢いモノが私たちをサポートしてくれるからである。

そんな未来をいち早く実現している事例が、米ミズーリ州カンザスシティの取り組みだ。

2016年5月、カンザスシティはネットワーク機器大手のシスコシステムズ、および携帯電話事業者のスプリントと提携し、総額約1500万ドルをかけて同市のメインストリート(全長2.2マイル)の「スマート」化を進めることを発表した。

こうした都市全体でIoTを活用しようという取り組みは、「スマートシティ」として、前述の総務省資料でも5Gの有効な活用先として想定されている。

カンザスシティでは、対象となったメインストリートにセンサーを備えた街灯を125本設置するなどして、リアルタイムにデータを収集。

それを分析することで、駐車場の空き状況や渋滞の状態、路面電車の到着時間などに関する情報を、市内25か所に設置予定のキオスク端末から確認することを可能にしている。また生データは外部の企業にも提供され、彼らが独自のサービスを展開することができるようになっている。

さらにデータ分析を通じて、街路のインフラを柔軟に運用する取り組みも行われている。たとえば道路の渋滞状況に応じて、赤信号による待ち時間を増減させたり、人が通っていない街路を把握して、その部分だけ街頭の明かりを弱くしたりといった具合である。

言うなれば、スマート化されたメインストリート全体が、巨大なロボットとして機能していると言えるだろう。