もちろんこうした機器類のすべてが、4K動画を見始めるわけではないが、大量の機器類が安定してネットに接続できるようになっている必要がある。

そこで5Gでは、同時接続数も大幅に改善される。現在の計画では、1平方キロメートルのエリア内で100万台が接続可能になることが目指されており、これは4Gのおよそ100倍に当たる。いまより100倍のモノがネットに参加し、私たちのためにさまざまな情報をやり取りしてくれるようになる可能性があるわけだ。

また5Gでは、消費電力の少ない形で通信を行うことも可能になる。この点も、小型の機器が継続的に情報をやり取りするという、IoT時代にふさわしいものと言えるだろう。

一方でこうした機器類の場合、通信の速さや情報量の多さではなく、通信が遅延せず行われることが求められる場合がある。人間向けの4K動画配信が多少遅延したり、ストップしてしまったりしても、最悪ユーザーから怒られるだけで済む。

しかしIoT化された医療用機器を使い、患者の異変をリアルタイムで察知したり、あるいは遠隔手術を行ったりするために通信を使っていたら、わずかな遅延が大惨事を招きかねない。

そこで5Gでは、遅延を抑え、信頼性を上げることも取り組まれている。具体的には、遅延が1ミリ秒以下になることが目指されている。4Gの場合、遅延は数十ミリ秒程度であるため、5Gでは10分の1以下に改善される計算になる。これはロボットカーなど、重要な機器類の遠隔制御への応用が期待されるレベルだ。

このように5Gでは、私たち人間のユーザーに向けた通信速度の向上にとどまらず、IoT時代の本格到来を見越した大量接続・高信頼性の実現が目指されている。それではこうした通信インフラが整備された場合、どのようなアプリケーションが実現可能になるのだろうか。

5Gで生活はこう変わる

総務省は2016年に「電波政策2020懇談会」を開催し、有識者を集めて次世代の通信のあり方について検討を行った。そこで発表された、「5Gの利活用分野」と題された資料では、12の領域に整理して期待される5Gのアプリケーションを列挙している。いくつかを見てみよう。

5Gによるプロセス全体の自動化を想定しているのが、「工場・製造・オフィス」や「建設・土木」、そして「農林水産業」の分野だ。

さきほどIoTを簡単に解説したが、そのIoTの活用先として最も期待されているのが、製造の領域である。

いまでも工場では大幅な自動化が進んでいるものの、遠隔からの監視や自動制御ができる「賢い機器」をさらに多くしたり、あるいは複数の施設や企業間で情報をやり取りし、生産・流通プロセス全体で最適化が行えるようになれば、さらに効率的でムダの少ないものづくりが実現できる。

この発想は「インダストリー4.0」、あるいは「インダストリアル・インターネット」などと呼ばれ、各国で盛んに研究と実用化が進められている。

この「インダストリー4.0」に、5Gはうってつけのインフラだ。大規模な企業であれば、自社工場内の通信環境に多額の設備投資を行い、高度な自動化を促進できる。しかし5Gが整備されれば、小さな町工場でも大量のセンサーを導入したり、あるいは田畑など工場の外でも生産の自動化を進めたりできるようになるだろう。

さらに部品類を工場間で輸送する際の状態を監視したり、小売店の店先で陳列・販売の状態を確認したりすることが可能になる。まさに「インダストリー4.0」が求める、生産から消費まですべてのプロセスを通じた最適化が実現されるわけだ。

一方で、人間が最も身近に感じられる5Gの恩恵として期待されているのが、やはり「エンタメ、ゲーム、観光」そして「スポーツ、フィットネス」の世界だろう。前述のように、5Gの普及によって、4Kなど高精細な映像を一度に大勢の人々が楽しめるようになる。