新発売のiPhoneや新しいWebサービスがもたらす革新はニュースになるものの、「通信速度」の進化は話題にならない。ただ、数年以内に導入される、現在の「4G」から「5G」への進化は、私たちの生活を根本から変える可能性を秘めている。

スマホの「通信制限」などはもう過去の話になり、もはやスマホすらいらない世界が訪れようとしている。いったいどういうことなのか。情報通信に詳しい、経営コンサルタントの小林啓倫氏が解説する。

「5G通信」がもたらす革新

海外の若者に人気のメッセージアプリ、Snapchat(スナップチャット)。LINEなどと同様に、友人や家族と他愛のないやり取りをするためのアプリだ。

Snapchatには、「(プライバシーに配慮して)送信したコンテンツが一定時間経つと自動消去される点」という特徴以外に、別の特徴がある。

それは「起動するといきなりカメラが立ち上がる」点だ。しかも起動されたカメラは、モード変更しなくても長押しで動画が撮影できる。つまり映像によるコミュニケーションがデフォルトになっているのである。

それの何が不思議なのか? と思われたかもしれないが、思い返してほしい。数年前まで、携帯電話で画像や映像を閲覧する、あるいは送信するには長い時間がかかり、何も考えずにできる行為ではなかった。

しかし、いまやモバイル端末から画像や映像で意思を伝えることが、当たり前の行為となっているのだ。昨年「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれたように、いつの間にか、私たちのコミュニケーションに大きな変化が起きているのである。

この静かな革命をもたらしたものは何か? その答えのひとつは、通信技術の進化だ。2010年頃から、世界各地で「4Gサービス」が開始された。

それによって高速データ通信が可能になり、スマホやタブレットなど大画面の端末で画像・映像を視聴しても、ストレスなく楽しめるようになったのである。iPhoneなどの端末の進化や新しいWebサービスと違い、通信インフラの革新には目が向きにくいが、その重要性を無視することはできない。

そしていま、4Gに続く次世代の通信規格「5G」が整備されようとしている。5Gの普及により、私たちの社会や文化にどのような変化が生まれるのだろうか。

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5Gで何ができるのか

4Gから5Gへ――言葉の上では数字が1つ大きくなるだけだが、5Gでは飛躍的な進化が実現されようとしている。それは大きくわけて、①通信速度・容量の向上、②同時接続数の増加、③遅延時間の低下の3点だ。

まずは通信速度の向上である。これまでも4Gなどの「次世代型通信」と呼ばれたものは通信速度を改善してきたため、当然の変化と思われるかもしれない。

しかし4Gから5Gへの進化は、実に100倍という速度アップが期待されている。現在多くのエリアで使用できるようになった4Gでは、通信速度は100Mbps程度。それを5Gでは、100倍以上の10Gbps~20Gbps程度に向上させることが目指されているのだ。

それに合わせ、通信容量も改善される。それは4Gと比較した場合、1000倍程度に引き上げることが目指されている。

これにより、たとえば人口が密集する都市部において、大勢の人々が手元の端末からファイルサイズの大きい4K動画をストリーミングで視聴したとしても、何のトラブルもなくコンテンツが楽しめる環境が実現されると期待されている。

次の進化は、同時接続数の増加である。近年「IoT」というキーワードに注目が集まっており、耳にされたことのある方も多いだろう。これは「Internet of Things」の略で、直訳すれば「モノのインターネット」となる。文字通り、私たち人間ではなく、さまざまなモノがネットにつながって情報をやり取りするという概念を表す言葉だ。

モノの数は人間よりも多く、それがネットに接続するとなれば、ネット「人口」の数は爆発的に増加する。実は既に、IoT機器の数は全世界で200億台近くに達していると推定されており、約40億人といわれる人間のネットユーザーの5倍も存在している。