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トランプvs.FBI「怪文書バトル」でプーチンがほくそ笑む理由

図解でわかる「ロシアゲート」

乱れ飛ぶ「怪文書」

2016年の米大統領選挙におけるトランプ陣営とロシア政府との共謀疑惑、いわゆる「ロシアゲート」に関して、大きな動きがありました。ドナルド・トランプ米大統領が2月2日、ある「機密文書」の公開に踏み切ったのです。

この文書は「ニューネス文書」と呼ばれ、下院情報特別委員会デビン・ニューネス委員長が中心になって与党共和党スタッフが作成したものです。

ニューネス委員長は、前回の大統領選挙でトランプ大統領が勝利を収めると、政権移行チームに入りました。トランプ氏とは非常に関係の深い下院議員の一人です。

以前、ニューネス委員長は下院情報特別委員会のメンバーよりも先に、トランプ大統領に「ロシアゲート」捜査関連の情報を流したとして、野党民主党から委員長辞任を要求されたことがあります。

ロシアゲートを捜査している下院情報特別委員会では、ニューネス委員長と民主党アダム・シフ筆頭理事との間で激しい対立が起きており、同委員会はほとんど機能していないともいわれています。

「ニューネス文書」(Photo by gettyimages)

4ページにわたるこの「ニューネス文書」の主題は、「司法省と連邦捜査局(FBI)による外国諜報活動偵察法(FISA)に基づく偵察活動権限の乱用」です。つまり、ロシアゲートを捜査する特別捜査チームや司法省が、不当な手段でトランプ大統領の身辺を探っている、と主張しているわけです。

中でも最大の争点となっているのが、トランプ陣営の元外交顧問でロシアスパイの疑いが強いカーター・ペイジ氏に対する盗聴監視許可の延長を得ようと、FBIがFISA裁判所に提出した「スティール文書」です。

現在、FBI・司法省・民主党陣営から繰り出された暴露文書である「スティール文書」と、それに対抗するためにトランプ陣営が出してきた「ニューネス文書」という、二つの「機密文書」が飛び交う事態となっているのです。

 

元MI6が暗躍

「スティール文書」は、ロシア関係を専門とする元英国情報部員(MI6)で、モスクワの英国大使館に勤務経験があるクリストファー・スティール氏によって作成されたものです。スティール氏は、過去にFIFA(国際サッカー連盟)の腐敗に関する情報をFBIに提供したこともあり、米情報機関と厚い信頼関係を築いているといわれています。

「スティール文書」には、「トランプ氏がモスクワのホテルで乱痴気騒ぎを起こしたことを、ロシア政府に握られた」という真偽不明の情報が含まれていたため、ほとんどのメディアは報じるのを見送りました。

今回公開された「ニューネス文書」は、ひとことで言えば、この「スティール文書」の信頼性を批判する内容です。

「ニューネス文書」によれば、まず司法省とFBIは「スティール文書」を根拠に、ペイジ氏に対する盗聴令状の延長を申請しました。真偽不明の文書を捜査に使おうとした、という点が第一の論点です。

第二の論点とされているのが、スティール氏が弁護士事務所と米調査会社「フュージョンGPS」を通じて、民主党全国委員会(DNC)とクリントン陣営から16万ドル(約1737万円)以上の報酬を得ていた、という情報です。

さらにスティール氏は、大統領選前に公然と、「トランプが当選しないことを切望する」と語っていたといいます。

つまり「ニューネス文書」は、「スティール氏はハナから反トランプ・親クリントンであり、『スティール文書』は真偽不明なばかりか政治的に偏向している。そんな文書が捜査の根拠となるのは、おかしいじゃないか」と糾弾する内容だったわけです。

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