photo by iStock
社会保障・雇用・労働 人口・少子高齢化 格差・貧困 医療・健康・食 ライフ

「卵子凍結」したけど結婚願望ない35歳キャリアウーマンの黄昏

A子とB美の複雑な感情【22】

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第10試合「独身」対決のBサイド。

今回のヒロインは、35歳バリキャリOL。年齢的なリミットを考慮して「卵子凍結」したものの……。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki

働く女が人生について立ち止まって考える時

個人主義の時代の、しかも庶民の場合、誰かにプロポーズされた時に首を縦に振るか横に振るかの大部分が、その人への愛情や興味によって決まると考えられるが、それとは別に結婚というもの自体への「したい」「したくない」がもちろん存在する。

そしてそれもまた「したい」「したくない」の白黒の間に、「今はしたくない」「まだしたくない」「よくわからない」「したいけど勇気がない」などのグレーの部分が幅広く横たわる。

10代はもちろん、20代半ば以前であると、むしろほとんどの女性がこのグレーの部分にいて、ものすごく愛に燃えているとか妊娠したとか、強い動機付けでもない限り、突然のプロポーズには戸惑い、すぐには答えが出せなかったり、思い悩んだ末に「あなたのことが嫌いなわけじゃないけど」と歯切れ悪く断ったりする。

photo by iStock

ただ、30代になると女の生殖器官の特性も手伝って、グレーは白側にどんどん傾き、「そろそろしたい」「いい加減したい」と白の厚みが増してくる、というのがごく一般的な場合である。ただ、別に29歳と30歳で性格が全く変わるなんていうことはありえなくて、30歳の誕生日に自分の年齢の響きに慄き急に意識が変わるものもいれば、まだまだ他のことに興味があり、30歳の響きに気づかない人もいる。

年齢の前後はあれ、働く女がふと人生について考えるタイミングというのは遅かれ早かれ突然やってくるものらしい。そしてそのタイミングが遅ければ遅いほど、もちろん人生の選択肢は知らぬ間に狭まっている。

彼女が初めて真剣に女としての人生について立ち止まって考えなくては、と意識したのは昨年のことで、今年、彼女は36歳になる。

 

「去年のお正月に、酉年っていうのに気づいて、ということは干支を口ずさんだら私今年が年女っていうことになるな、と思って。あー、24歳の時におじいちゃんの商工会の豆まきで豆撒いたのってもうそんな前か、とか一瞬呑気な思い出に浸って、ん? てことは、次は36?ってなって急に焦った。その時は誕生日前だから34歳だったんだけど、もう今妊娠しても高齢出産かよ!って衝撃」

彼女のキャリアは結構華々しい。出身こそ地方の公立高校だが、大学在学中にカナダに1年間留学、そのため同級生から1年遅らせて卒業したのち、大手広告代理店にさらっと就職した。

当初、営業畑に配属されて思うような仕事ができず、またパワハラ上等な上司とぶつかり合うなどトラブルはあったものの、彼女のことを入社当時から目をつけていた良心的な上司も数多くいたせいか、特例的な異動ができ、希望通りマーケティング関連の部署でメキメキ良い仕事をした。

新メディア「現代新書」OPEN!