オリンピック フィギュアスケート

いよいよ出場!満身創痍の王者・羽生結弦にかけたい言葉

「連覇を期待」「がんばれ!」でもなく
青嶋 ひろの プロフィール

本人の意思で「休む」「出ない」という決断はない

フィギュアスケートのシーズンは、長い。選手は一番大事な試合に向けて調整するため、ケガの症状がそれほど重くなくとも欠場するケースは多い。しかし羽生の場合、本人の意思で「休む」「出ない」という決断はまずないのだ。彼が欠場するということは、羽生本人にはどうしようもないほど負傷が重いか、ドクターストップがかかってしまったときかだ。

だからNHK杯も全日本選手権も、大事を取っての欠場では決してなかった。彼自身はどんなに出たがったかしれないが、とても出場できる状態ではなかったのだろう。

 

やはり現在の男子シングルを席巻する、多種類、多回数4回転の負荷は、大きすぎるのだ。

たとえば日本男子の後輩、宇野昌磨は、今シーズン4回転の成功率を上げるため、3回転のフリップや3回転ループの練習を重ねているという。4回転を何度も跳ぶ練習は身体に負担になるため、やりすぎない。その代わり3回転をたくさん跳んでフリップやループの感覚を身体に叩き込み、本番ではその感覚で4回転を跳ぶ、というのだ。跳ばない練習――そんなものが必要になるくらい、4回転は彼らの身体を大きくむしばむ。

現役時代に4回転トウループを跳んでいたあるコーチは、昨今、4回転フリップやルッツを跳ぶ選手たちの身体が特に心配だ、と語っている。

「トウループ1種類でも、身体への影響は大変なものでした。踏切足である左足への負荷は、特にすごい。現在、ルッツ、フリップを跳ぶ選手たちは、その負荷を右足にもかけていることになります。両足で4回転を跳ぶなど、いったいどれだけの負担になるのか……」

photo by gettyimages

羽生が2016年に成功した4回転ループ。羽生がこのジャンプに挑戦したのは、新しいジャンプを身につけたい意欲も大きかっただろうが、実は前シーズンに傷めた左足を使う4回転トウループをなるべく跳ばずに済ますために、サルコウともう1種類、別の種類の4回転を手に入れたかったためでもあった。

当時は4回転3本でも十分世界チャンピオンになれていたから、サルコウとループで3本の4回転を跳べば、トウループを跳ばずにすむ。16年の時点で、既にそこまで左足は悲鳴を上げていたのだ。

しかし時代はすすみ、2種類3本の4回転ではもう若い選手に後れを取るほどになってしまう。そこで彼は、右足を踏切に使う4回転ルッツに挑んでしまった。結果、招いたのは、NHK杯前の負傷。左足に続き、右足までも4回転に捧げてしまったようなものだ。

ここまでの身体で、さらにはロシア杯から4ヵ月も実戦から離れての、いきなりのオリンピック。五輪連覇などほんとうに難しい、と考えるのが普通だ。

新メディア「現代新書」OPEN!