呉勝浩氏(左)と下村敦史氏

乱歩賞受賞・若手作家二人が全面対決!勝つのは「白」か「黒」か

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白黒つけるぜ! RANPOの乱 下村敦史vs.呉勝浩 若手乱歩賞作家対決! ミステリー界の最高峰・江戸川乱歩賞。その受賞者であり、気鋭の若手作家である下村敦史と呉勝浩がお互いの文庫新刊でガチバトル! Webで人気投票を行います! “贖罪”の白いミステリー(『ロスト』)か、“裏切りの”黒いミステリー(『叛徒』)か。「こちらの方を読んでみたい」、「こっちの方が面白かった」でもOK。URLからお気軽にご投票ください! 投票期間は2018年5月14日(月)まで。投票いただいた方から抽選で10名様に、著者二人のサイン本をセットでプレゼントいたします! http://ranpo-ran.com

白黒つけるぜ! 『ロスト』VS.『叛徒』

――今回、呉さんの『ロスト』を“贖罪”の白いミステリー、下村さんの『叛徒』を“裏切り”の黒いミステリーとして対決していただくことになったわけですが、率直にどう思われましたか?

 嬉しかったですね。特に相手が下村さんですので、僕よりもはるかに知名度があって売れている作家さんですし、乱歩賞の先輩でもありますし、胸をかりて勝負しようかな、という気持ちになりました。

下村 僕は『闇に香る噓』ではダブルカバー展開をやりましたから、『叛徒』はどうなるんだろうと思っていたので、今回こういう話がきて、オッと思いましたね。

 『叛徒』は僕が『ロスト』を書いていた頃に出版されたと思うんですよ。僕は当時リアルタイムで読んでいたんですが、その時はそんなに意識せず書いていたんですけど、言われてみると確かに『ロスト』も、自分が罪を犯してそれを乗り越えようとするストーリーになっていて。

はじめこの企画を聞いたときは、なんで『叛徒』と『ロスト』の対決なんやろなぁと思ったんですけど、改めて読むと結構近しい題材を扱っていたんだなぁと思いました。

下村 そうなんですよね。両作とも乱歩賞受賞後第一作で、過去に犯した罪に葛藤するテーマも似ていて、変わり種の警察小説なんですよね。

呉勝浩氏(左)と下村敦史氏

――『叛徒』と『ロスト』について、お二人はそれぞれどのような印象をお持ちでしょうか?

 『叛徒』は、テーマと手法が見事に重なっているところがスゴイと思います。刑事としての社会の正義と、父親としての家族の正義との間で主人公が葛藤していくところを、日本語と中国語の通訳という構造にあてはめ、あぶりだしていくというのが完璧にできていますよね。

しかも、脇のキャラクターも彩りを添えていて。この脇役の魅力というのは、『闇に香る嘘』のときにはなかったものだと思うんですよね。重苦しさがなくて、エンタメとしても優れたものになっていて、一言でいえば、プロフェッショナルな仕事だと思いました。

破綻も、読みが止まるところもないし。でも、ちょっと欲張りすぎかな。もっと手を抜いてくれ、やめてくれって感じですね。デビュー後第一作でここまでやらないでって。可愛げがないなぁ

下村 可愛げがない(笑)。『叛徒』では、主人公以外でも、他の作品だったら主役を張れるような人物で脇を固めるというやり方を意識していました。田丸なんかはそうですね。『ロスト』は、本当に不可解な誘拐劇ですよね。

コールセンターに電話が掛かってきて、今度は警察に犯人が自分で連絡して、100人の警官にそれぞれ100万円を運ばせる。もう何が起こっているのかわからない。その上で、もう一人の主人公が謎の人物に監禁され、殴られながら、それを受け入れていて、最初から謎のオンパレード。こんなに謎めいたミステリーの冒頭はないなと思います。

また、全ての登場人物が自分の環境の中で活躍しながら、ちゃんとひとつの真相に向かっていくという構成は、作家としてどうやってこれだけの人物をコントロールしたんだろうと思っていました。しかも登場人物たちの印象の付け方も、短い中でもとても巧い。これは映画的だなと感じました。

良い映画だと、主人公にちょっとでも絡む人物って、一言でもその性格とか人生が伝わるように作られていると思うんですけど、そうやって端役にまで手が行き届いているところが本当に巧いなって思います。僕は自分で書いていて、端役にまで手が行き届いていないと感じているので。

 僕も『ロスト』に関して、最終的な読み方は色々あると思うんですけど、事件が起こっている前半はすごく気に入っています。やっぱり事件がリアルタイムに動いていくっていうのは楽しいと思うんですよね。下村さんの作品は、リアルタイムに事件が起こっていくのを追っていくというものは少ないんじゃないでしょうか。

この先僕は、『ロスト』を越えないといけないわけですが、いやー、どうなんでしょう。作品が変わると見せ場も変わってくるんで、難しいですよね。例えば、現代を舞台に、強盗をカッコよく描けるかと言えば結構難しいじゃないですか。そう思うと誘拐は、リアルタイムのネタとしてはやりやすかったと思います。またやりたいなって思ってるんですけど……、何かネタをください。

下村 えーっ(笑)。でも、あれだけ登場人物が登場して視点もいくつもある中で、それぞれが自分の知っている状況、自分の職業、与えられた環境の中で真相を暴こうと行動して、ひとつの結末へと繋がっていくのを読んで、これだけきれいに収束させるのはやっぱり巧いなと。

 そう言っていただけると嬉しいですね。『叛徒』もそうだと思うんですが、執筆している時、ある技能を持っている人に、少しでもその人ならではのものを出したいと考えるじゃないですか。そこを読みとっていただけると嬉しいです。

下村 僕は『叛徒』を書いている時も、動いているのは主人公一人で、あとはそれなりに個性的なキャラクターを配してはいたんですけど、主人公が物語の中で動いている裏で、他の人物がどういう風に動いているのかはあんまり見えていないんですよね。他の人物が主人公の視点に唐突に現れている感じで。

 僕にも耳が痛い話ですね。それに関しては、まだまだ足りていないなと思う瞬間があったります。