経済・財政

日本の新幹線のチケット代は、やっぱり高すぎだった

フランスと比べれば一目瞭然
加谷 珪一 プロフィール
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日本はすでに、移動したくても経済的な理由で移動できないという、移動貧困ともいうべき状況に陥っている可能性がある。もしもそうだとすると、これは単なる社会保障の問題にはとどまらない可能性が出てくる。実は、経済成長と人の移動には密接な関係があり、移動の停滞は経済成長を阻害する可能性があるからだ。

経済学の分野では、一般的に、GDPが成長する要因は3つあるとしている。ひとつは投下資本、もうひとつは投下労働力、そして最後はイノベーションである。日本は人口が減っているので労働力は減少しているが、資本投下とイノベーションを活発にすれば人口減少をカバーできる。

実際、過去のGDPの動きを見ても人口増減の影響はそれほど大きくなく、イノベーションの活発さが成長率を左右してきた。ここで重要となってくるのがイノベーションと移動の関係である。

実はイノベーションの活性化と人の移動には密接な関係がある。

 

よく考えてみれば当たり前のことだが、同じ場所で連続してイノベーションが発生するとは限らない。大阪が拠点の企業で大きな技術革新があり、西日本に主要な生産ラインが設定された場合には、人材需要の分布が変わり、東から西に人が移動することになる。

当然、その逆もある。つまり人の移動が制限されるとイノベーションが阻害され、結果として成長が滞るという負のスパイラルが発生しかねないのだ。

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感情的な二元論はもうやめよう

高度成長の時代には最大で年間400万人近い都道府県間移動があったが、その後、移動者数は一貫して減少が続いており、現在では200万人程度しか移動していない。

日本の場合は、東京一極集中型だったので、基本的に人の移動は地方から東京という流れが中心だったが、こうした活発な移動が経済を支えていたという側面は無視できないだろう。

最近はネットが発達しているので移動の必要がなくなったとの見解もあるが、かならずしもそうとはいえない。米国では、先端的なIT企業が拠点を構えた街には、各種のサービス業が集積し、結果的に労働者の賃金が上昇するという傾向が顕著となっている。

スマホ時代を迎え、簡単に情報のやり取りができるようなったことで、逆に人と会って情報交換する価値が高まっている。シリコンバレーなど、通信手段を駆使できるはずの先端的なIT企業がこぞって、同じエリアに集積することには理由があるのだ。

こうした状況を考えると、日本でも移動を支援する政策について、もっと真剣に検討した方がよいだろう。

先ほど、筆者は日本の旅客輸送が停滞していると述べたが、ここ数年の航空輸送は状況が改善している。これは明らかにLCCが普及した効果である。

世の中では、自由競争の是非や政府による補助の是非について、感情的な二元論ばかりが戦わされるが、こうした政策は状況に応じて使い分けるべきものである。自由化が容易な航空輸送は、規制緩和による効果が大きいだろうし、構造的に競争原理の導入が難しい高速鉄道は、政策的な補助が重要となるだろう。
 

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