経済・財政

日本の新幹線のチケット代は、やっぱり高すぎだった

フランスと比べれば一目瞭然
加谷 珪一 プロフィール

どう安くするのか

フランスの格安TGVはOUIGOと呼ばれている。席間の狭い普通車のみで、発着駅はパリ中心部ではなく郊外となっている。しかも、出発30分前に駅に行く必要があるなど、各種の制限が設けられているが、とにかく料金が安い。

この格安料金は政策的に導入されているもので、ドイツなど他の欧州各国にもこうした格安チケットがある。欧州には移動の権利を保障するという考え方があり、主に所得の低い若年層の移動を確保するための措置として活用されている。

一方、航空輸送はこれとはまったく逆のメカニズムによって格安料金を実現している。徹底した競争によって運賃を引き下げる市場原理主義の導入である。

 

東京から福岡までの航空運賃は、JALやANAといった大手エアラインの場合、直前予約では2万円台後半が多く、1カ月以上先になると1万円台後半まで下がる。

東京-福岡の営業距離は、欧州ではパリ-ローマ間に近いが、エールフランスなど大手エアラインの料金は2万円台から3万円台と日本と同じかむしろ高い。米国ではニューヨーク-シカゴ間に相当するが、米国は大手でも安く、2万円台後半のチケットがある。1ヵ月以上先になると半額近くになるのも同じだ。

これがLCC(格安航空会社)になるとさらに価格が下がる。LCCの場合、パリ―ローマ間は1万円を切るケースが増え、1ヵ月以上先のものであれば5000円前後のチケットもある(極端なケースでは2000円台もある)。日本でもLCCを使えば安いケースでは7000円前後で福岡まで行けるので、似たような状況といってよい。

鉄道の運賃と航空運賃を比較すると、状況がはっきりと見えてくる。

つまり意図的に競争政策が導入された航空輸送の場合には、米国や欧州はもちろんのこと日本においても運賃の低下が見られる。しかし鉄道輸送は航空輸送と異なり、インフラ建設を伴うので簡単には競争原理を導入できない。このため欧州では政策的に低価格運賃が導入され、所得が低い人の移動を支援している。

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移動が滞ると経済成長にマイナス

日本は長く経済が低迷しているので、人の移動も停滞している。日本では過去10年で、鉄道輸送は9%、航空輸送は5.2%(いずれも人キロ)しか増えなかったが、欧州では、鉄道輸送が19%、航空輸送は55%も増加している。米国には日本や欧州のような高速鉄道はなく航空輸送が中心だが、同じ期間で航空輸送量は20%伸びた。

日本人の給与所得者の平均年収は20年前には420万円もあったが、現在は360万円まで下がっている。ここ数年は横ばいが続いているが、物価が上昇しているので実質的な賃金はさらに低下した。

300万円台の年収では、家族4人が年2回、実家に帰省するだけも相当な負担である。20代前半の労働者の賃金は、40代後半の労働者の半分しかないので、若年層ほど状況は厳しい。

欧州や米国の1人あたりGDP(国内総生産)は日本と比較すると1割から5割ほど高いので、平均年収もその分だけ高いと思ってよい。これだけ稼いでいるにもかかわらず、高速鉄道に格安料金が設定されているという現状を考えると、日本の移動コスト(特に鉄道)は極めて高いと言わざるを得ないだろう。

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