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世界を震撼させた株価下落の「真犯人」は、やはりあの人だった

市場は「リーダー」の資質を疑っている
町田 徹 プロフィール
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早くもミソをつけたパウエル新議長

また、今回の株価急落・乱高下の局面では、就任直後に早くもミソをつけた人物として、FRBのジェローム・パウエル議長の名前が長く記憶されることになるかもしれない。前週末比で1175ドル安と1日として過去最大の下げを記録した2月5日に就任、マーケットが何らかのアクションを催促したにもかかわらず、これといった行動を起こさず急落と乱高下を傍観したからだ。

 

パウエル新議長の対応は、「マエストロ(巨匠)」と呼ばれ、18年以上もその座に君臨したアラン・グリーンスパン元議長と比較される結果になった。

グリーンスパン氏は就任から2か月あまりを経た1987年10月19日、ニューヨーク・ダウが1日で20%以上下げる「ブラックマンデー」に遭遇。翌朝、「流動性を供給する準備がある」という緊急声明を出して、ダウを反発させた実績を持つ。この対応は、ヘッジ手段の一つとして使われるオプション取引の「プット」(=あらかじめ決められた価格で、株や債券を売る権利のこと)にちなんで、「グリーンスパン・プット」と呼ばれた。

ジェローム・パウエルFRB新議長信任は得られるか、ジェローム・パウエルFRB新議長 photo by gettyimages

グリーンスパン氏がその後、再三のグリーンスパン・プットでアメリカ経済を支え続けたことから、今度は今年3、4回予定している利上げを見直せという意味も込めて、市場が「パウエル・プット」を催促したにもかかわらず、パウエル新議長は無視した格好となった。

市場はリーダーの資質を問うている

FRBに限らず、欧州でも中央銀行関係者の間では、金融引き締めに入る際に株式相場が多少下げるのは当たり前なので、動揺して腰が引けていると受け止められかねない行動を慎むべきだというムードが強い。

また、グリーンスパン・プットには、その後のITバブルを招いたとか、リーマンショックにつながるサブプライムローン・バブルを招いたといった批判もあり、議長が動きづらかったのも事実だろう。

だが、パウエル議長はエコノミストや市場関係の出身ではなく、弁護士出身のうえ、リーダーシップをとるよりも調整型の意思決定を好むことから、今回、迅速に対応できなかったとの見方も多い。

仮に、今月28日に予定されている議会証言まで、市場向けに有効なメッセージを発信することなく、その議会証言でも市場との対話に失敗すれば、FRB議長としての信認を得ることが難しくなるかもしれない。

いずれにせよ、今回のニューヨーク株相場の急落・乱高下は、直接的な経済の動向だけでなく、トランプ大統領とパウエルFRB新議長という、アメリカの政治・金融体制の根幹を担うリーダーたちの資質を問う面も併せ持っていることを理解しておく必要があるだろう。

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