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山中伸弥さんが羽生善治永世七冠に聞いた「AIと将棋の未来」

「棋士という仕事はなくなりませんか」
山中 伸弥, 羽生 善治 プロフィール
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棋士という職業はなくなるか

羽生 AIの関係者に聞いた話ですが、「今後、AIが発達してもなくならない職業は何ですか?」とよく聞かれるそうです。その質問に対しては「それは今まだ存在していない職業です」と答えるということでした。なるほどな、と思いました。

もちろん、今ある仕事で残っていくものはあると思いますが、これから新たにできる職業もあるわけです。百年前の人が今の職業を見ると「これは何なのか?」とわからないものも確かにいっぱいあるでしょうね。

山中 棋士というお仕事はなくなりそうにないですね。

羽生 いや、どうなんでしょうか。AIは量産できますし、将棋ソフトは最近、本当に強くなっていますから。

山中 でも人間の競争は人間しかできないんじゃないですか。コンピュータが二台で将棋をやっていても、見ているほうはつまらない。「機械A」が「機械B」に勝ったと言われても(笑)。そうなると、もう別の競技ですね。

 

羽生 今すでにAI同士が一日二十四時間、対局し続けている「Floodgate」(フラッドゲート)というサイトがあります。そこから新しい棋譜がどんどん生まれています。もし将棋ファンの人たちが「AI同士の対戦のほうが人間同士の対戦よりも面白いね」と思うようになれば、棋士という職業はなくなってしまうかもしれません。そういう危機感はあります。

逆に言うと、今の棋士には、人間同士の対局を魅力的なものにして、AI対局以上の価値をつくり出し続けていけるかが問われているんだと思います。

一方で、AIが進化していったときに、人間の発想をより豊かにさせる、人間が今まで以上の創造性を発揮できるようになる可能性も十分あるのかな、とも思っています。AIと同じようにとは言えなくても、人間の能力も確実に上がっているということは言えるんじゃないでしょうか。

山中 このスピードで行くと、僕たちが生きている間に、今とはまったく違う技術がまたできますよ。だって携帯電話がスマホに置き換わって、自宅でも電車の中でも子供からお年寄りまでみんな使うようになるなんて、十年前には想像もしなかったです。

だから、今から十年後、いったいどうなっているのか、僕には想像がつかないですね。でもだからと言って、人間が機械に支配されることにはきっとなっていないと思います。

羽生 ある特定の目的に限定した専門人工知能は順調に開発が進み、活用されていくと思います。でも一つの分野で学習した知能を他の分野で応用できる、人間の知性のような「汎用性」を持った人工知能ができるのは、まだまだ先でしょうね。

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