予選リーグの戦いは2月10日・12日・14日〔PHOTO〕gettyimages
平昌五輪 アイスホッケー

平昌五輪「スマイルジャパン」、笑顔に隠された苦難の道のり

日本アイスホッケー界、復活の狼煙
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たしかな手応え

最も恐ろしい人間とは、どのようなものだろうか。鬼の形相で悪事を働く者だろうか。いや、そうではあるまい。微笑を浮かべながら怜悧に相手を追い込み、とどめを刺す者こそ真に恐ろしい者である。

韓国平昌の地で戦う女子アイスホッケー日本代表、「スマイルジャパン」の23人が目指しているのは、そういうものに違いない。

 

たとえば、壮行試合において第1セットのセンターとしてチームを引っ張るFWの米山知奈選手が、その可愛らしさと美しさを同居させたユニフォーム姿で、いま最も大切にしているプレーは「相手を欺くプレー」だと満面の笑みで語るのを見ると、この日の試合で彼女に独走ゴールを決められた相手チームのDF陣に同情したくなる。

米山知奈選手FWの米山知奈選手〔PHOTO〕gettyimages

あるいは、クールビューティで知られるGK藤本那菜選手が「私の仕事は相手のゴールを一つも許さないことです」とこともなげに言い切るのを見ると、その言葉通りに完封された相手のFW陣に立ちはだかった壁の厚さを実感する。

藤本那菜ゴールを守る藤本那菜選手〔PHOTO〕gettyimages

これらは、五輪本番まであと10日と迫った先月24日から30日にかけて西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで開催された「スマイルジャパン ブリヂストンブリザックチャレンジ」での一コマである。

韓国に乗り込む直前の最後の調整のために用意されたこの大会には、五輪出場こそ逃したものの、日本よりも現在世界ランキングでは上のドイツ代表とチェコ代表が招かれ、五輪本番のスケジュールと同じく1日おきに、計4試合を戦ったスマイルジャパンは全勝を収めた。

現在25歳ながらソチ五輪から二大会連続でユニフォームの左肩に「C」のマークを纏い、今や貫録さえ感じさせる主将大澤ちほ選手の「シーズンの中でも今が一番調子が上がってきている」と言う落ち着きはらった表情を見ても、このチームができることはすべてやりきった者だけが得られる自信を身に着けていることは明らかだ。

大澤ちほ選手二大会連続で主将を務める大澤ちほ選手〔PHOTO〕gettyimages

本気でメダルを目指す

本来、女子アイスホッケーは冬季五輪の花形競技とは言えないだろう。

冬季五輪の華といえば、アルペンであり、ジャンプであり、スケートならフィギュアスケート、そして男子アイスホッケーであるはずだ。

そんな中、スマイルジャパンはひっそりと五輪出場権をとり、本番ではチケットの取りやすい競技として小さめの競技場で戦い、メダルには届かなくても全力プレーを見せて五輪の思い出とともに帰ってくればよかったのだろう。

だが、雪と氷の祭典の中で「氷」の舞台である日本海に面したリゾート都市・江陵に今月4日に乗り込んで調整を続けるスマイルジャパンは、いつの間にかそんなことでは済まない様々なものを背負うことになった。

今や国際政治の中心的な話題になっている韓国と北朝鮮の合同チーム「コリア」とも戦うことになり、とうの昔にチケットは完売、試合当日は異様な雰囲気のリンクでプレーすることが約束されている。

あるいは、低迷が続く日本アイスホッケー界の最後の希望言える存在ともなっている。大いなる注目と期待のなか、女子日本代表は、五輪史上まだ一つの勝利さえあげていないにもかかわらず、本気でメダルを取りにここに来ているのだ。

彼女たちは、そしてその先駆者たちは、いったいどのような道をたどってここに来たのだろうか。

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