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週刊現代 ドイツ

アディダス とプーマの「とんでもなく根深い確執」を紐解く

兄弟ゲンカの末に…

兄ルドルフ、弟アドルフ

スリーストライプスの「アディダス」、ネコ科の動物ピューマが飛び跳ねるロゴがトレードマークの「プーマ」。いずれも誰もが知っている世界的なスポーツブランドだ。

この二つの会社はともにドイツ・バイエルン州の小さな町ヘルツォーゲンアウラッハに本社を置く。このことは決して偶然ではない。というのも、アディダスとプーマの浅からぬ因縁が関係しているからだ。

1920年代、そのヘルツォーゲンアウラッハに流れるアウラッハ川のほとりにダスラー兄弟商会という製靴会社があった。兄ルドルフと弟アドルフからなるこの会社が作る靴は、ドイツのスポーツ愛好家たちから確かな支持を受けていた。

元々この会社は第一次世界大戦から帰還した弟アドルフが、母の洗濯室でスポーツシューズの生産を始め、そこに兄ルドルフが加わるかたちで'24年に設立。二人の情熱により、製靴事業は軌道に乗るが、当時のナチ党の台頭が二人の歯車を狂わせる。

ドイツ全体がナチズムに汚染されていた当時、ヒトラー政権への支持を巡って、次第に兄弟間での意見が対立するようになり、第二次世界大戦の勃発によりその軋轢は一層酷いものとなっていく。

そのころ職人気質で実際の靴作りに携わるアドルフは、販売担当だったルドルフを差し置き、会社の要となっていた。そのためヒトラーの国内総動員体制の下でも、アドルフは職務を理由に兵役を免除、一方のルドルフは連隊に配属。このとき兄弟間の関係は最悪となる。

 

戦後、'48年に二人は完全に袂を分かつ。販売部門の従業員の多くはルドルフに付いて行き、技術者の多くはアドルフのもとに残った。ルドルフはアウラッハ川の対岸にプーマを設立。そして、アドルフは社名に自身の愛称・アディと苗字の最初の3文字のダス(das)を合わせてアディダスと命名した会社を設立した。

後に二つの会社は世界的なスポーツブランドに成長。創業者の兄弟が没した現在も激しい競争を続けている。(井)

『週刊現代』2018年2月17・24日合併号より