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米国の“鼻血パンチ”作戦で「第二次朝鮮戦争」勃発の可能性

平昌五輪の裏で米中朝が不穏な動き

文在寅政権が「南北融和」を進める理由

今週、平昌五輪がいよいよ開幕するが、にわかに沸き起こった南北朝鮮融和ムードでオリンピックが「政治化」されてしまったせいか、地元韓国も盛り上がりを欠いているようだ。

金正恩委員長が元旦に平昌オリンピックに代表団を派遣する用意があると表明するやいなや、文在寅政権は飛び付くように「北朝鮮選手団の平昌五輪参加や南北関係の改善に向けた相互利益に関する問題」について高官協議を開催する提案を返した。

その後の政権の熱の入れように対しては、国内外から「北朝鮮の時間稼ぎに利用されている」という批判が湧き上がり、五輪参加を口実として経済利益を供与したりしないかも厳しく監視されている。

そんな批判に晒されても、文在寅政権が確信犯的に「融和」を進める理由は何か? 「もともと容共的な左派政権だから」が一つの理由だと思うが、理由はもう一つある気がする。

文在寅政権が懸命に融和を求めているのは「米国の対北朝鮮軍事侵攻が現実味を帯びてきている」と受け止めているからだと仮定すれば、謎が解けるのではないか。「戦争だけは何としても避けたい」という思い、という訳だ。

昨年11月20日に本欄で、「国防総省や米軍が本気で対北朝鮮軍事作戦の準備をしている気配を感じて、日本の防衛省はその事態が来たときに、日本としてどういう対処をするか、米国からはどんな協力を求められるか等々、強い緊張の下で『頭の体操』を続けているそうだ」と書いた。

軍事作戦に向けた米軍の準備は、9月初めの核実験、11月末の(1万3000km飛べると推定された)「火星15号」の飛翔実験の後、さらにステップアップしたようで、最近「ブラッディ・ノーズ作戦」という名前をよく耳にするようになった。

最初聞いたときはぎょっとしたが、まさに「鼻血」作戦といったニュアンスで、「限定的で抑制された武力攻撃」のイメージらしい。

 

トランプ政権内部にも意見の対立

下の一覧に示すのは「南北融和」が動き出した年の初めから急に増えた「ブラッディ・ノーズ」関連の米国報道だ。主要メディアが一斉に報じるのは、政府筋からリークがあったからだろう。

・2017/12/20「“ブラッディ・ノーズ”作戦はばかげている」(アメリカンコンサーバティブ)
・2018/1/6「米国と北朝鮮が第三次世界大戦にもつれ込む可能性」(ポリティコ)
・1/9「トランプ政権は北朝鮮を攻撃する“ブラッディ・ノーズ”作戦を検討」(アクシオス)
・1/9「米国は北朝鮮に先制攻撃で“ブラッディ・ノーズ(鼻血パンチ)”をみまうことを検討」(USAトゥデイ)
・1/9「雪解けのサインの一方で高まる緊張」(ウォールストリートジャーナル)
・1/12「北朝鮮を攻撃したい? 勝手読みは禁物だ」(ポリティコ)
・1/15「“ブラッディ・ノーズ”作戦をやれば北朝鮮との戦争まで一本道だ」(ワシントンエクザミナー)
・1/18「連邦議員:“ブラッディ・ノーズ”作戦は大戦争を引き起こす」(ディフェンスニュース)
・1/18「専門家:“ブラッディ・ノーズ”作戦は北朝鮮との戦争を招く」(フォックスニュース)
・1/25「シンクタンクCSIS:米国は依然として北朝鮮に対する“ブラッディ・ノーズ”攻撃を検討」(ブライトバード)
・1/30「ビクター・チャ:“ブラッディ・ノーズ”作戦は米国民に大きなリスクをもたらす」(ワシントンポスト)
・1/30「ビクター・チャ、“ブラッディ・ノーズ”作戦に反対して駐韓大使任命を降りる」(アメリカンコンサーバティブ)
・2/1「複数のレポートが『トランプ大統領は“ブラッディ・ノーズ”作戦を検討中』と報ずる」(ニューズウィーク)
・2/1「ホワイトハウスはペンタゴンに北朝鮮対策の選択肢を増やせと要求」(ニューヨークタイムズ)

時期から見て、「融和」に突き進む文在寅政権を牽制する狙いでリークしたという仮説も成り立つが、ほとんどの論調が「ブラッディ・ノーズ批判」一色であることを考えると、軍事作戦発動に慎重なペンタゴンからのリークのようにも思える。

一連の報道でとくに注目したのは、2月1日付けのニューヨークタイムス記事だ。「北朝鮮対策について、軍事オプションに親和的なホワイトハウス(マクマスター安全保障補佐官らNSC組)と消極的なペンタゴン(マティス国防長官、ダンフォード統合参謀本部議長ら)と国務省(ティラーソン国務長官)の間に深刻な意見の対立が生まれている」というのだ。

「電話会議を終えてマクマスター補佐官が退席した後、まだライン上に他の陪席者が残っていることを失念したマティス長官とティラーソン長官が、『案を出せ』とせっつくように会議を要求するNSCのことを『攻撃的すぎる』と愚痴を言い合った」という生々しいくだりもある。

ペンタゴンが軍事オプションに慎重なのは、「限定的な」軍事攻撃によって北朝鮮に大規模な反撃を自制させるというのは、言うべくして困難だからだという。

ちなみに、それはシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)から駐韓大使に抜擢されることが内定していたビクター・チャ氏の持論でもあり、氏は結局、政権との考え方の違いを理由に、任命から降りてしまった。

もちろん、だからと言って米国がほんとうに北朝鮮を攻撃すると決まった訳ではない。「敵を欺くにはまず味方から」の喩えもある。NSCが軍事作戦の具体化に前のめりだからだからと言って、マクマスター補佐官が一辺倒に好戦的という訳でもないはずだ。

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