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ヤマト運輸「128億円赤字の正体」アマゾンのせいじゃなかった

佐川が好調なのをみれば分かる
加谷 珪一 プロフィール

これは取り扱う荷物の種類と密接に関係している。両社の宅配便における荷物の単価は、ヤマトが592円、佐川が579円なので両社に大きな差はない。だがヤマトは、佐川と異なり単価の安いDM便を多数取り扱っている。DM便を含めるとヤマトの単価は338円と大幅に下落する。

佐川もメール便を取り扱っているが、単価が安い荷物は日本郵政に外注しているので、配送網への負担は少ない。ヤマトのDM便は、配送については主にクロネコメイトと呼ばれる個人事業主が行い、集荷については自社トラックで行うケースが多い。これが取り扱う荷物数や人件費の増加、業務の複雑化につながっている可能性が高い。

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会社の成り立ちがまったく違う

両社が保有する配送用トラック(最終配送用)の台数から1台あたりの荷物数を算定したところ、宅配だけならヤマトは139個、佐川は143個と大きな差はなかった。だが、ここにDM便の荷物を加えると、ヤマトの荷物数は255個と急増する。

ヤマトがDM便を積極的に取り扱っているのは、説明するまでもなく、創業家出身の故小倉昌男元会長が、信書の規制緩和をめぐり日本郵政と激しいバトルを繰り広げたことと深く関係している。

小倉氏には、ヤマトを日本郵政と並ぶ生活インフラ企業に育てたいとの意向があり、収益力が低いことを承知の上で、信書業務への進出を狙っていた。

競争原理を強く主張したヤマトの姿勢は評価すべきものだが、今となっては単価の安いDM便を多数取り扱っていることが、低収益の原因のひとつとなっている可能性が高い。

一方、佐川にはこうした姿勢はまったく見られない。その理由は、ヤマトと佐川の企業の成り立ちの違いにある。

 

ヤマトはもともと大口配送を行う一般的な運送会社だったが、小倉氏が業績悪化をきっかけに家庭用の小口配送業務に進出。宅配便のビジネスを日本で初めて確立することになった。つまり小倉氏がトップになって以後のヤマトは、基本的に宅配業務の企業ということになる。

これに対して佐川は、宅配ではなく企業向け小口配送を得意すると企業として成長してきた。

企業規模の拡大にともなって宅配業務にも進出し、ヤマトと似たような事業形態となったが、現在でも企業向け配送の会社という色彩は濃い。

同社にとって、トラックのドライバーは法人から注文を取ってくる中核営業マンという位置付けであり、かつてはドライバー出身でなければ幹部に昇進できないほど、彼らの立場は絶対的なものであった。

似たような業務を行っているように見えるが、企業の成り立ちや運送業務に対する基本的な考え方など、両社は何から何まで違っているのだ。