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ヤマト運輸「128億円赤字の正体」アマゾンのせいじゃなかった

佐川が好調なのをみれば分かる

宅配業界では拡大する需要に人員が追いつかないという状況が続いている。宅配大手のヤマトと佐川は似たような状況にあると思われがちだが、実はそうではない。

人件費増加に苦しむヤマトに対して、佐川の業績は堅調そのものだ。この差は、会社の成り立ちと基本的な収益構造の違いに起因している。1月30日にヤマトホールディングスは第3四半期決算短信を発表したが、これを機に「似て非なる存在」であるヤマトと佐川を比較した。

ヤマトの赤字の要因はアマゾンではない

ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスの2017年4~9月期決算は128億円の赤字となった。通期では黒字を確保する見通しだが、10%の営業減益となる可能性が高い。

同社はアマゾンをはじめとするネット通販事業者からの委託を積極的に引き受けることで取扱数量を伸ばしてきたが、急激な荷物の増加に現場が対応できず、業務が回らなくなるという事態が発生した。このため同社は取引相手各社に値上げを通告するとともに、取扱数量の削減を試みたものの、目論見通りにはなっていない。

一方、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスの2017年4~9月期決算は、営業利益が前年同期比23.7%増の289億円と順調に業績を拡大しており、続く10~12月期決算も約2割の増益だった。同社は昨年12月、東証1部に上場を果たしたが、初値は1900円と公開価格を17%も上回っており、株価はその後も上昇を続けている。

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ヤマトが苦しい状況にあるのは、先ほど述べたように、通販向け業務の見込み違いが直接的な原因である。

同社は佐川がアマゾンの配送から撤退したことを最大のビジネス・チャンスと捉え、積極的にアマゾンの業務を取りに行った。本来であれば、取扱量の増加に合わせて人員を拡充すべきだったが、同社の対応は遅れ、現場では長時間残業が頻発した。

 

最終的には多額のコストをかけて人員を増加したり、外注を増やす必要に迫られ、今回の減益につながっている。

とりあえずヤマトは値上げを実施したので、これ以上の業績悪化は回避できるとみられるが、同社が抱える本質的な問題が解決されたとは言い難い。

ヤマトの経営陣もアマゾンからの取扱量増加によって現場が混乱することは十分に予測できていたはずである。それにもかかわらず、人員の拡大にすぐに踏み切れなかったのは、同社がもともと高コスト体質の企業だからである。

重くのしかかる「DM便」

ヤマトと佐川は似たような会社に見えるが、両社の収益構造はまるで異なる。2017年3月期におけるヤマトの売上高に対する営業利益率は2.4%、佐川の営業利益率は5.3%だった。佐川の方が利益体質だが、両社に根本的な違いあるようには見えない。

だが収益の中身をさらに詳しく分析すると、両社の違いが際立ってくる。上場しているのは持ち株会社なので、業績の数字には、本業以外の事業も含まれる。本業である運送事業で比較すると、ヤマトと佐川の収益力はまるで違ったものになる。

ヤマトのデリバリー事業における部門利益はわずか56億円しかなく、ほとんど利益が出ていない。業績が良好だった時代も、営業利益に占める本業の割合は半分程度であり、ヤマトは運送という本業ではあまり稼げていないことが分かる。

これに対して、佐川のデリバリー事業における利益率は全社の利益率とほぼ同じであり、儲けの大半を本業である運送業務で稼いでいる。

この違いはどこから来るのだろうか。

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