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北朝鮮への武力行使を「やる気」のアメリカが、決してやらないこと

朝鮮半島「最も危険な時期」の到来前に

2018年、朝鮮半島はどうなるのか? トランプ大統領の一般教書演説をきっかけにアメリカの武力行使をめぐる考え方を読み解く――国際政治学者・篠田英朗氏の論考を公開!

かなり以前から、平昌オリンピックの後が、朝鮮半島にとって最も危険な時期になると言われていた。

その2018年春が近づいてきている。

占い師のように情勢を予言するふりをすることには意味がないが、現状を整理して理解し直してみることは必要だろう。

トランプ大統領、初の一般教書演説

1月30日、トランプ大統領は初の一般教書演説を行った。ほとんどの時間は減税効果などの国内問題にあてられた。

付け加えられた外交政策部分で目立ったのは、世界で最も苛烈な独裁政権として言及された北朝鮮の金正恩政権の取り扱いだった。

核開発の米国本土への脅威だけでなく、金正恩政権の残忍さを訴えるために、米国人大学生オットー・ワームビア氏のご両親に加えて、脱北者の池成鎬氏まで議会に座らせて紹介した。

松葉杖を掲げる池成鎬氏〔PHOTO〕gettyimages

通常、一般教書演説に招かれる一般人は、今回もやはりそうであったとおり、「無名のアメリカン・ヒーロー」のイメージに合致するアメリカ人たちだ。

献身的行為で仲間を救った軍人、路上で出会った赤子を養子にした警察官、勇敢にギャング集団と立ち向かう国境警備隊員、減税の恩恵を子どもの教育にあてる勤労者、といった人々だ。

一般教書演説=State of the Union演説は、連邦の現状を議会の前で語る場であり、「無名のアメリカン・ヒーロー」の功績を、ファーストネームで呼びかけながら大統領が紹介し、国会議員たちが立ち上がって賛美の拍手を送る、そのための場である。

その観点からすれば、脱北者でソウル在住の池氏の存在は、異質であった。

ただし池氏が北朝鮮当局に、「キリスト教者と接触しなかったか」、と問い詰められて拷問されたというエピソードをあえて紹介したことは、アメリカ国民の感情をくすぐるのに十分だっただろう。

あくまでもアメリカ国民向けの演出だが、それだけのアピールをしておきたい理由があった、と考えるのが自然だ。

 

確かに今回の一般教書演説は、「トランプは本当にやる気だぞ、これで何もしなかったらまずいでしょう」、という印象を強く与えるものであったと言える。しかも一般教書演説は、北朝鮮の金正恩政権が持つ根本的な問題を強調する強烈なメッセージを放った。

脅威の除去を狙った武力行使の可能性は、依然として非常に高い。もちろん、金正恩政権が「圧力」に対応して、核開発を放棄する気になれば、武力行使は回避される。

したがって武力行使は決定事項ではないはずだ。ただし遂行するつもりがないなら、言っても「圧力」にはならない。トランプ大統領は、その点をよくわきまえている。

「決断」を下していないとしても、「やる気」ではあるだろう。

それは、いったい何を意味しているだろうか。

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