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巨大ベンチャー都市・深センで見えた中国IT企業の「アキレス腱」

起業家の目に共産党政権はどう映るのか
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先週は、「深圳の秋葉原」こと華強北(ファーチアンベイ)の街中で繰り広げられている各種の未来型商品について紹介した。

⇒第1回【「無限の欲望の街」深センを視察して見えた、日本産業の暗い未来

秋葉原の30倍の広さを持つ華強北は、もともとは携帯電話の部品街だったが、いまやドラえもんのポケットからこぼれ出たような多種多様なITグッズが、地平線の彼方まで陳列されていた。

そして、そこには中国各地、また世界各地から、バイヤーたちが商品の買い付けに来ており、契約が成立するや、即日のうちに商品が梱包され、深圳港に向かう。まさに、「アジアのシリコンバレー」の名にふさわしい「深圳品質」と「深圳速度」が体現されていた(「深圳速度」という言葉はもともと、1982年から85年にかけて37ヵ月で、当時の中国国内最上階53階の深圳国際貿易中心ビルを建てた時の流行語である)。

第2回の今回は、こうした「アジアのシリコンバレー」の華やかな世界の裏側で展開される若者たちの熾烈な奮闘にスポットを当ててみたい。

一攫千金を夢見る起業家たち

華強北の中の、とあるビルの投資会社が借り受けた一室。そこには、だだっ広い机が広がっていて、若者たちがパソコンに向かって、熱心に仕事していた。

一見すると、IT企業のオフィスのようである。だが彼らは互いに、ほとんど周囲と口を利かない。そう、彼らは同僚ではなく、全員が「起業家」だった。何らかの新技術や斬新なアイデアなどを引っ提げて、一攫千金を夢見て中国全土からやって来た「兵(つわもの)ども」なのである。

深圳の2016年の新規登録企業数は、38万6704社に上った。平均すると毎日、1059社も創業していることになる。雨後の筍のような、空前の創業ラッシュが続いているのである。

各起業家には、ひと月1000元(1元≒17.5円、以下同)を払うと、パソコンが置ける狭いスペースと、椅子だけが与えられる。期間は3ヵ月である。

彼らは与えられた3ヵ月以内に、自己の商品やアイデアを華強北で営業し、契約を取って来なければならない。3ヵ月経っても華強北で認められなければ、即刻退場である。

 

実際、「予選敗退」の若者がほとんどのようだ。例えば、ある起業家の青年が、展示スペースの一角を借りて、木製の箸置きやペン立て、スマホ立てなどを並べていた。聞くと、「中国は木製工芸の品質がよくないので、自分でデザインした斬新で心温まる木製工芸を、ブランドとして販売したい」という。

彼の決意は買うものの、失礼だが、日本の百円ショップで売っていそうな代物である。まもなく投資家がやって来るというが、素人の私が見ても、「これはダメだろうな」と思った。

若い起業家たちは、もし周囲の反応がよければ、一つ上の階に「格上げ」され、やや広いスペースが与えられる。かつ投資会社から資金も提供される。最初の資金供与は10万ドルで、その企業の株式の5~6%と交換というのが相場だという。投資会社にしてみれば、今後、その会社が「大化け」した暁には、莫大な利益を手にするという仕組みだ。

「格上げ」された広いスペースでは、台湾から来たという若い創業者が、自社製品を見せてくれた。石膏を使って、親指大の小さな肖像をフルカラーで作れる3Dプリンターを開発したのだという。

「深圳に来て1ヵ月余りで、約100台売れました。タイの工場で生産していますが、おかげで注文が相次ぎ、生産が間に合わない状況です」

彼はまもなく、さらに上の階に用意された「個室」に移るという。かつ投資会社は、多額の資金提供を申し出たのだとか。

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