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格差・貧困 世界経済 ドイツ

ドイツで発生「お腹いっぱいデモ」が世界に伝えようとしているもの

彼らは一体、何に抗議しているのか

「お腹いっぱい」のヨーロッパ

1月19日から28日まで、ベルリンで恒例の「ベルリン国際緑の週間」というフェアが開かれた。1926年以来の歴史を誇り、食品産業・農業及び園芸の展示会としては世界一の規模だそうだ。来訪者はおよそ40万人。日本からも数社が出展していたが、報道はあまり聞かない。

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開会2日目、展示会場の前で自然保護団体の激しい抗議デモが繰り広げられた。ドイツ人は何につけてもデモをするので、それ自体はとりわけ珍しいことでもないが、「緑の週間」のデモもこれが8回目。スローガンは“Wir haben es satt!"だった。

sattという単語は「お腹いっぱい」という意味で、「もうたくさん!」といったイメージになる。デモの参加者の人数は、警察発表では1万人、主催者側の発表では3万3000人。抗議はとても感情的だ。

彼らが何に抗議しているかというと、大規模農業、過剰な農薬や肥料の散布、動物虐待につながる集中畜産、そして食肉の大量生産など。これら農業の工業化を改めるため、農政の抜本的変革を求めている。

 

ドイツ人は、DNAの中に強い飢餓の記憶を何度か持つ。一番最近で、とても過酷だったのが第一次世界大戦後。イギリスがヴェルサイユ条約を押し付けるため、ドイツが降伏した後も港湾封鎖を解かなかったからだ。

「痩せこけて腹の膨らんだ子供たちが英軍駐屯地のごみをあさる」姿を見るに堪えないと、ドイツに駐留していたイギリス兵たちが帰国を望んだ(『戦争を始めるのは誰か』渡辺惣樹)。

あまり知られていない話だが、ドイツでは港湾封鎖の解除までの7ヵ月余りで25万人が餓死したという。つまり、その後に現れたヒトラーが、無我夢中で穀倉地帯である東欧に進出していったのは、それなりの理由があったといえる。

第2次世界大戦後、食糧事情を安定させることは、ヨーロッパ諸国の最重要課題となった。EUが未だに莫大な予算を農業政策に割いているのは、その名残だ。

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現在のドイツはEUではフランスに次ぐ農業大国で、農産物の輸出額はアメリカ、オランダに次いで世界第3位を誇る(2016年)。自国での消費も多く、ドイツ人一人あたりの肉の消費量は1年で59キロ。飢餓の記憶もすっかり薄れた。

その結果、お腹がいっぱいになった人たちの間では、自然保護や動物愛護が叫ばれるようになった。自然農法への回帰と、動物を虐待しない畜産の模索である。

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