週刊現代

『北の国から』倉本聰さんがベストセラー『未来の年表』を読んだら

こりゃあおったまげた!
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複雑に考えすぎるな

倉本 僕は、日本古来の農村社会にヒントがあるように思う。

うちのスタッフが農業をやっているんですが、それは自分たちで食うためです。農業というのは本来、売るためにやるんじゃない。自分で食うためにやる。余った時にそれを他所へまわせば、その分だけ自然と他所から別のものがまわってくる。

それが日本古来の農村社会の姿だし、そうした原始的なところに還っていく思考方法が僕は好きなんです。

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『未来の年表』に、人が死んだ時の焼き場がなくなるという話があるでしょう。あの話はとても印象的でした。

僕自身は墓なんて作りたくないと思っていたんですが、最近やむをえず墓を買ったんです。骨壺は素焼きで、下はコンクリートにはせず壺が土に直接触れるようにします。それには理由があります。

うちの親戚が最近、35代も続いてきた墓を移動させたんです。それで昔の墓を掘り返した時、十数代の骨壺は崩れて骨が土に吸収されていました。「死」ってこういうものなんだと思った。

願わくば、僕は原野でのたれ死に、死体はキツネか何かに食われ、残った骨は微生物に食ってもらいたい。土に還ることが本当の死なんだと思う。

河合 明治維新以降の近代的な価値基準では計れないものですね。

 

倉本 もっと自然に考えればいいんですよ。

河合 本当にそうですね。そもそも子どもを作るということに関しても昔の人は疑問を持たなかった。戦前だって少子化になっているし、決して国のために産もうと考えている人なんていなかった。

それが証拠に'41年に「産めよ、殖やせよ」の政策が閣議決定されたが、出生数は軍部の思惑通りには増えていないんです。人間の心は国に規定されるものではない。

人も生物だから、次の世代に命をつなぐということは自然にやっているのです。

倉本 現代人は複雑に考えすぎなんですね。人間以外の動物は自分たちの歴史を振り返って反省することなんてないでしょう。『北の国から』の五郎はそっちに近い。

実は五郎はすでに『未来の年表』で描かれていた人口減少後の社会を生きているんです。でもまったく危機感なんて抱いていない。当たり前に生きているだけ。それが人間のあるべき姿なんじゃないかな。

倉本聰(くらもと・そう)
35年、東京都生まれ。東京大学卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。'77年、富良野に移住。2006年よりNPO法人C・C・C富良野自然塾を主宰
河合雅司(かわい・まさし)
63年、愛知県生まれ。中央大学卒業後、産経新聞社に勤務。産経新聞社論説委員、大正大学客員教授。2014年「ファイザー医学記事賞」大賞を受賞

「週刊現代」2018年2月10日号より

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