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「地方議員の年金復活」自民党の新法案が的外れすぎる

こんなことでは自治体は活性化しません
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自民、公明両党が、地方議員の年金を復活させる法案を今国会で提出する。自民党の竹下亘総務会長が昨年11月、「若い議員は辞めたら生活保護だ。ホームレスになった人もいると聞く」と発言したことが口火となった。しかし、地方自治総合研究所の今井照主任研究員は、「年金復活は、自治体議会が抱える問題の解決にまったく寄与しない」と指摘する。

かつて自治体議会が年金を廃止した理由

自治体議会の議員年金が廃止されたのは2011年のことでした。なぜ廃止されたのか。このとき総務省に置かれた「地方議会議員年金制度検討会」は、次のような理由をあげています。

①市町村合併の大規模かつ急速な進展に伴う議員数の予想を上回る激減
②行政改革による議員定数・議員報酬の削減

簡単に言うと、掛け金を出す人が少なくなり、年金制度が維持できなくなったからやめるということ。以前から出ていた(短期で受給資格を得られる制度が)「議員の特権だ」という批判に応えたわけではありませんでした。

下の【図1】は、2004年以降の自治体議員定数の推移です。2004年から見ると、2016年では4割以上も削減されている。2004年から2008年までが市町村合併の影響による削減で約2万人、その後もいわゆる行政改革の過程で約5千人減少しています。

確かにこれだけ議員の人数が減ってしまうと、年金制度は維持できない。もし維持しようとすれば、ほとんどを公費で負担しなければならなくなります。さすがにそれでは市民からの批判を免れないでしょう。

よくよく考えてみると、①の市町村合併は自治体議会が議決しなければ行われなかったし、②の議員定数の削減もそれぞれの議会が条例を可決しなければ進まなかった。住民から選挙される「政治」であるはずの議会や議員(のあり方)が、「行政」の改革として効率化の対象になるのは本来おかしい。それを自治体議会が自ら決めたのだから、つまりは自分で自分の首を絞めたことにほかなりません。

市町村合併も議員定数の削減も、結果として自治力の低下につながり、とりわけ周縁部地域の人口減少や衰弱に拍車をかけたものとして、各地で市民から批判されています。自らの判断で地域社会を放り出したツケが回ってきたわけで、議員たちに同情する余地はほとんどない

にもかかわらず、降って湧いたようにいま議員年金復活の話が出てきているのです。

 

「議員のなり手が少なくなった」とはいえ

実は、議員年金制度が廃止されたからといって、公費負担がなくなったわけではない。制度廃止前から年金をもらっている人や、制度廃止時に議員だった人に対する経過措置があるからです。制度を廃止したあとは、対象となる議員から新たな掛け金が入らなくなるので、ほとんどが公費の負担となります。

上の【図2】は、議員年金廃止後の公費負担額の累計を試算したものです。存命する限り年金支給は続くので、先の長い話になりますが、総務省が試算するところでは総額1兆1400億円に達すると見られています。それでも年金制度を維持するよりはマシということです。

そのような試算がすでにあるなか、どんな理由で議員年金復活の話が出てきたのでしょうか。

それは自治体議会の現状に対する危機感です。第一に、自治体選挙の投票率が一貫して低下している。ときに興味関心が高まる選挙があって、一時的に投票率が上がることもありますが、傾向としてはずっと低下しています。下の【図3】を見るとわかるように、いまや5割を切るのは当たり前です。

第二に無投票当選、つまり議員定数に対して立候補者が同数か、それより少ない(定員割れ)選挙が目立つことです。無投票選挙が目立ち始めたのは1980年代ごろからで、最近の傾向とは言えません。しかし、いまや小規模な自治体では議員定数を減らしても無投票当選になることがあるくらいで、直感的には無投票が増えている印象があります。

いずれにしても、議員のなり手が少なくなっていることは事実です。たとえば、北海道の浦幌町議会は「議員のなり手不足検証報告書」を作成し、2017年3月に「地方議会議員のなり手不足を解消するための環境整備を求める意見書」を可決しています。

なぜ議員のなり手が少なくなったのか。それはある意味で、地方自治のあり方にも関わる大問題なのですが、ここでは長く脱線することになるので割愛します。ただ、確実に言えるのは、議員年金を復活させて待遇を改善すれば解決する、というような問題ではないということです。

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