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中国に出現した「未来都市」深センで見た驚くべき光景

無限の欲望が集まる街で
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スマホ決済レストラン

華強北で名を挙げた「一軍企業」が越して行く先が、南山区にある「深圳湾創業広場」だ。

'16年の国際特許出願数で世界最大となった企業はZTE(中興通訊)の4123件で、2位はファーウェイの3692件。いずれも深圳の会社だ。特に南山区の国際特許出願数は1万389件に上る(深圳全体で1万9648件)。

深圳湾創業広場は「深圳ソフトウエア産業基地」の中にあって、18棟の高層ビルを含む3.6万平方メートルの広大な地域だ。最終的に完成したのは昨年で、すでに300社以上が入居している。うち7割以上がハイテク企業だ。

管理会社の深圳市投資ホールディングカンパニーは、4500億元もの資金を動かしている。

中国の「IT50強企業」は、すべて深圳湾創業広場に入っている。深圳湾創業投資ビル、深圳湾科学技術生態園、深圳市ソフトウエア産業基地、深圳湾イノベーション科学技術センター、創智ビル、生物医薬産業園……目もくらむような集積地だ。

 

その中で、ひときわ眩く輝いているツインタワーがあった。中国で10億人以上が利用するWeChatで有名な、テンセントの新たな本社ビルである。

テンセントは、「深圳ブランド」のトップランナーで、昨年末時点の株式時価総額で世界6位に躍り出た(日本企業の最高位は42位のトヨタ)。

そのテンセント本社ビルの1階に、レストラン「超級物種」があった。ランチ時ということもあって、広い店内は、IT企業に勤める若者たちで立錐の余地もないほどだ。

このレストランは、日本のデパ地下のように、各種料理がパックに入れてあり、客は食べたい物を勝手に取っていく。サーモン、タコ、サラダ巻きが計8貫入った39元の寿司セットが人気だった。

ところが、レジ台が店のどこにもない。客はパックにスマホを近づけ、WeChat Payのスマホ決済で支払っていく。そういえば深圳の町で現金を持ち歩いているのは外国人だけである。

Photo by GettyImages

レストラン奥の海鮮コーナーでは、500gあたり249元もする巨大なカニが、水槽を泳いでいた。そのカニを、若い女性が水槽の前にスマホを翳して、買い上げていった。

カニは3kg以上あって、3万円以上した。彼女は、きっとビジネスで一発当てたのだろう。

テンセント本社ビルの入り口には、巨大なサイコロを立てたようなモニュメントが建っていて、そこには、「跟党一起創業」(共産党とともに創業する)と刻まれていた。そしてロゴの右脇には、中国共産党を示す鎌と槌のマークが入っていた。

グーグルもフェイスブックもツイッターもLINEも共産党政権に禁じられている中国で、IT企業が生きていく苦悩を見た思いがした。

近藤大介(こんどう・だいすけ)
中国や朝鮮半島を中心とするアジア取材をライフワークとする。『大国の暴走』『活中論』など24冊の著書がある。

「週刊現代」2018年2月10日号より

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