町田徹「ニュースの深層」
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郵政の「国策会社化」は
国鉄、JAL型の破綻を繰り返す

ユニバーサルサービスの負担を
国民に押しつけるな

2010年05月11日(火) 町田 徹
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 鳩山由紀夫連立政権は4月30日、小泉郵政民営化を見直す「郵政改革関連法案」を閣議決定した。現在のところ、5月13日にも衆議院本会議で提案理由の説明を行い、同法案の国会審議に入る構えをみせている。

 しかし、同法案は、本来は独占企業を律するための政策哲学をすり替えて用い、日本郵政に特権を付与することを可能にするという支離滅裂な内容だ。

 背後には、現政権・連立与党に便利な集票マシーンとして、日本郵政を末永く活用しようとする意図が透けてみえる。

 こうした法案は、日本郵政にモラルハザードをもたらすリスクがある。特権を享受しようとして、政治の言いなりになって経営の合理性を無視し、最後は破たんした国鉄や日本航空(JAL)の轍を踏む懸念が小さくないのである。

 「郵政改革関連法案」は、郵政グループの経営基盤の強化策を盛り込んだ「郵政改革法案」、5年前に成立した日本郵政株式会社法を手直しする「日本郵政法改正案」、そして、その他の関連法規の字句修正などをまとめて行う「関係法律の整備等に関する法律案」の3本立てとなっている。

 筆者の見るところ、何より大きなポイントは、親会社の日本郵政株式会社に対し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命のそれぞれ3分の1超の株式を保有したうえで、両社の金融商品・サービスをあまねく全国で提供する義務(ユニバーサルサービス義務)を課すことにした点にある。

 本来、ユニバーサルサービス義務は、独占企業を規制する論理に過ぎない。1985年に分割された巨大通信会社の米AT&Tが、それまで、その分割に抵抗するために用いたのが原点とされる。

 すなわち、独占利潤を不採算地域でのサービスの提供・維持の費用に充てるので、AT&Tの市場独占を容認してほしいという理屈だ。さもないと、新規参入事業者は儲かり易い地域だけで事業を展開するため、AT&Tが不採算地域のコストを賄えなくなると主張したのだった。

 この論理は、日本でも旧郵政省の所管分野の一部に導入された。手紙・はがきの「信書」の国営独占が長く続いた郵便、電電公社時代の通信、そして特権的な受信料の徴収を国内で唯一認められているNHK(放送)の3つが、その分野だ。

 このうち、競争が進んだ通信では、ユニバーサルサービス制度の見直しが進み、現在は、新規参入した事業者のユーザーも含めて、1電話番号当たり毎月8円の負担を全ユーザーにしてもらい、僻地の固定電話サービスを維持する仕組みに衣替えしている。

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