現場のリテラシー向上が課題

2016年からこのESASYのテスト導入や販売を開始し、1年が経過した。

幾つものブランドのリアル店舗に導入する中で、そこには大きな壁が存在することがわかった。それはブランド内部のリアル店舗運営サイドのデータ分析に対するリテラシーが、決して高いとは言えないことだ。

ESASYで計測したデータの例 写真提供/株式会社クレスト

例えば、EC運営サイドは、日々様々なWEBトラッキングツールを導入して、様々な角度からデータを見ている。

CVR(コンバージョン率)、CTR(クリック率)、CPC(クリック単価)、CPA(顧客獲得単価)などの単語がもはや標準的な言葉として使われいることから見ても、感覚論ではなくデータを中心に日夜議論と努力を進めている。

こうした方が良いという長年の経験と勘に頼ることもあるだろうが、すべての施策はデータを中心に議論され、結果が出なければ施策を変えて自らの勝ちパターンをデータから導き出そうとするという行動が、もはやビジネス上「標準的」な動きである。

一方でリアル店舗運営サイドは、きちんとデータ化されていると言えるのは、POSレジデータとP/L、B/Sのみであり、マーケティングファネルの上流で非デジタル部分に関する分析はこれまで成されることはなかった。

リアル店舗側にはリテールマーケティングやビジュアルマーチャンダイジング等の職務ポジションがあり、彼らが店頭のファサード(店舗の正面の外観)デザインやショーウインドウディスプレイ、店内の広告や陳列などの意思決定をしている。

彼らはこれまで「データによる裏付け」がない職種であったため、長年の経験値の上に成り立つ感覚的で属人的な基準によって日々意思決定をしてきた。

そのため、例えばESASYで計測したデータを渡しても活用できる方が少なく、データの宝の山が目の前にありながら、それを見ずにこれまでの感覚論を信じてせっせと働いているのである。

リアル店舗で進む意識改革

ところが2018年に入り、弊社へのESASYの問い合わせや訪問先の顧客の状況が変化しつつあるような肌感覚がある。

巷ではEコマースの台頭、リアル店舗の意義が今一度問われ、AI、ビッグデータ等のデータが活用されることが「必要だ」と認識するようになりつつある。

人材に関しても、これまでの考えからすると驚くような転職者を見かけることもある。IT業界においてデータサイエンスを行っていた人材が、ファッションブランドのしかもリテール(リアル店舗側)のマーケティングを担当するようになるという例も、幾つかの企業で見受けられるようになった。

WEBサイトのアクセス解析ツールであるGoogle Analyticsが登場したときも、最初は誰もがこう思っていた。

「WEBサイトの訪問者数や滞留時間なんか測ったって、商品の売上とどう関係あるの?」と。

リアル店舗では売れない、ファッションの次の土俵はEコマースでの勝負だ、などとも言われる昨今だが、リアル店舗内のデータサイエンスが今以上に解明されてくる頃に、リアル店舗の真価が改めて問われるようになってくるのではなかろうか。