小売業のKPIに起こしたイノベーション

私たちは、M&Aによって、インナチュラルという植物を中心としたライフスタイルショップを8店舗展開する小売業を経営している。

インナチュラルの外観 写真提供/株式会社クレスト

小売業の経営上、注視すべきKPI(重要業績評価指標)として、入店数、購買客数、売上、客単価、客点数、点単価、在庫回転率などの指標が挙げられる。先述のツールESASYを活用してインナチュラルを経営することで、このKPIに対してイノベーションを起こし始めることができた。

具体的には、「店舗前交通量」と「視認量」というKPIを加えることで、店舗前交通量\入店量=入店率、店舗前交通量\視認量=視認率=ファサードデザインの効果、視認量\入店量=デザインがもたらす入店への影響力、特定商品の陳列やディスプレイの視認量\特定商品の売上、などの分析が可能となる。

実際、インナチュラルでは、これらのデータを活用してディスプレイの見直しをして、特定店舗の売上を20%ほど上昇させることに成功しているというケースもある。

なかなか経営改善が難しい昨今の小売業において、売上を20%引き上げることが実現できたこと自体が、データの価値の高さを証明しているのは言うまでもない。

個人情報保護の工夫

何かを疑問に持ち、それを解決したほうがより良い世界になると考える人たちはいても、実際それを開発するために必要な仲間を集めて走り出せる人は少ない。しかし、この課題に対して走り出しているプレイヤーが世界にはいる。

Prism(プリズム)
Euclid Analytics(ユークリッドアナリティクス)
RetailNext(リテールネクスト)
ABEJA(アベジャ)←日系プレイヤー
ESASY(エサシー)←日系プレイヤー(クレスト自社製品)

このようなプレイヤーがすでにこのマーケットに参入しており、特に米国を中心に導入が進んでいる。

私自身、各社の製品に触れたことがないため、それぞれのツール間の差異に関してはまだ研究が不足しているが、いずれも「カメラによる画像解析」であり、交通量、入店量、滞在量などの計測ができることは変わりないであろう。

自社製品であるESASYと他社製品との大きな差異をここで1点挙げておくと、ESASYはこのツールの中で唯一、動画や画像を撮影していないし、保存していない、ということが言える。

ご想像いただきたい。例えば皆さんのスマートフォンでカメラを立ち上げ、ご友人の顔にカメラを向けた時、シャッターを押さずしても顔を認識し、顔の周りに四角い枠ができて「顔を認識している」ということがわかるだろう。

イメージとしては、この状態のままシャッターを押さずして顔を認識しているという情報を書き出すということで、顔の画像情報はデータとして保存されることなく、「そこに顔があった」という事実だけがデータベースに書き込まれることとなる。

歩いてるだけで「勝手に顔を撮影された」ということになっても、私たちの製品は「撮影していない」ため、個人情報保護の観点でも対応できてきると言えよう(ただし、ここは法律やガイドラインもまだ曖昧な部分も多いのが事実である)。