不正・事件・犯罪

「焼身自殺で抗議しようと思った」地面師被害者を苦しめた警察の怠慢

騙し取られた総額、5億円

これでは被害者が救われない

どうにも不可解な「仕事納め」としか言いようがない。世田谷の元NTT寮の土地建物取引を巡る5億円詐取における、東京地検の事件処理のことだ。

これまで書いてきたように、昨年12月4日から5日にかけ、地面師の北田文明や配下の松田隆文ら4人が、警視庁捜査2課と町田警察署に逮捕された。そこからいよいよ年の瀬の押し迫った22日後の昨年暮れ、東京地裁立川支部は2017年最後の仕事として、北田と松田の2人を起訴した。が、4人のうち残る2人は不起訴処分となり、釈放されてしまったのである。

世田谷の5億円事件は、内田マイクをはじめとした大物地面師たちの関与も取り沙汰されていた。ホテルチェーン「アパグループ」や住宅建設「積水ハウス」が被害に遭った他の事件との関連も囁かれていた。だが、そうした事件との関わり合いが解明されるどころか、このままでは事件はこぢんまりと矮小化されてしまう公算が大だ。これでは被害者も救われない。

 

都心で横行する地面師事件は、その規模や悪質性の割に表沙汰にならないケースが多い。文字どおり摘発されるのは氷山の一角なのだが、それすら全貌解明に届かない。なぜこうなってしまうのか。改めて世田谷事件を検証しながら、その原因を探る。

「間違えて振り込んだ」と言い訳

(前回まで・2015年、内田マイクら大物地面師グループに騙され、5億円を支払った不動産業者の津波氏。「実行犯」の一人を捕まえ、5億円の振込先の一つである大阪の会社へと向かったが、そこは看板すらない、誰もいないマンションの一室だった。呆然と立ち尽くす津波。東京に戻って、実行犯を警察に突き出したが、思いもよらぬ反応が…… http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53739

地面師グループに騙されて、5億円を支払った東京都内の不動産業者、津波幸次郎(仮名)が、くだんの取引をおこなったのが、2015年5月27日のことだ。これが詐欺の犯行日である。

地面師の北田から指示を受け、仲介業者として登場した「東亜エージェンシー」社長の松田が、津波の5億円を分配して詐取する。その5億円の中で、振込先となっていた大阪・岸和田のペーパーカンパニー「セキュファンド」への金の流れを、津波たちは独自に追及した。

銀行伝票の控えからその流れを時系列で整理すると、まず松田は、取引当日の27日午後1時頃、騙し取った5億円のうち、3億2500万円をM銀行六本木支店のセキュファンド社名義の口座に振り込んだ。そこが本来、売り主の待っていたM銀行学芸大駅前支店とは別の口座なのは、言うまでもない。そして、その振り込みの11分後、全額近い3億円あまりが口座から引き出され、残金がほぼゼロになる。

正確な資金の流れはのちに気づいた事実だが、不審を抱いた津波たちは極めて迅速に動いた。27日中に松田を都内で捕まえ、松田とともにセキュファンドの事務所のある大阪に向かった。翌28日、大阪のM銀行で口座が空になっているのを確認すると、セキュファンドの事務所を訪ねた。津波本人が思い起こす。

驚いたことに、そこはただのワンルームマンションで、会社の看板も出ていませんでした。『もぬけの殻』とはこのことです。それで東京に取って返し、僕の会社で善後策を練ることにしたのです。

会社には取り引きした銀行の方がお見えになっていました。松田らは間違えて振り込んだと言い張っていました。銀行の方によれば、もし本当に間違いなら〝組み戻し〟という作業をして、いったん元に戻すこともできるという話でしたので、念のためその作業をしたのですが……」

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