「おむつがいらなくなった」

DFreeの仕組みはシンプルです。超音波センサーを内蔵したマッチ箱ほどのセンサーを下腹部に医療用テープで装着すると、センサー部で排泄物の状態を測定。

集めたデータが、Bluetooth経由で室内にあるアクセスポイントを経由してWi-FiかSIMで弊社のサーバーの方に届き、独自のアルゴリズムによって得られた排泄予測情報をスマートフォンなどの通信端末へ知らせるというものです。

バッテリーと通信機能を備えた本体では、光で排泄のサインを確認できるので、これを見て自分でトイレに行くタイミングを判断することも可能です。

右の箱がアクセスポイント。ここからWi-FiかSIMでデータをサーバーに送る。装着は左上の医療用テープでスムーズに行える。 Photo by Riki Kashiwabara

今は介護施設向けが前提のため、持ち歩きは想定していませんが、今年の夏には一般個人向けにもサービスを開始する予定で、より機動性を高める方法も含めて、最終的な検討を進めています。

開発段階ではハードの作成も大変でしたが、最も苦労したのがデータの収集でした。どうやって溜まって、どう出るかというデータが世の中にまったくなかったからです。

そこで、2015年末から高齢者施設で臨床実験をはじめ、データの収集に着手。製品化までにおよそ150の施設で延べ2000人ほどの方に協力いただき、多くの発見がありました。

例えば、介護施設で暮らす高齢者の6-7割がおむつをしているのですが、失禁する理由には大きく二つある。1つは膀胱か排尿機能に何らかの問題があるケース。

2つ目は、機能には問題がないものの、自分のタイミングがわからずトイレだと言えないとか、トイレに移動するまでに時間がかかるパターン。排泄ケアのプランを立てるためにはそれぞれの方がどちらなのかの見極めが大切で、その際に我々が集めたデータが有効だとわかったのです。

実は、頭がしっかりしている方ほど、漏らしたくないし、おむつは使いたくない。だから逆に頻繁にナースコールでトイレに連れていって欲しいと言うのです。DFreeを使えば、正確に尿の溜まり具合がわかります。

中には、それまで20回もトイレに誘導していた人(その多くは思い違い)を4回まで減らせたとか、人によってはおむつの使用量が半分になった例もありました。それによって介護士の負担も大幅に軽減できますし、なにより本人が幸せですよね。

今まではトイレが不安で外出を諦めていた人が、外に出られるかもしれない。もう一度人生楽しめるかもしれない、と前向きになってくれたとか、漏らすのが怖くて外で水分を控えていたが、外出先で好きな飲みものを思い切り飲めて幸せだったと言ってくれた方もいました。

データを集めやすいという点から排尿に絞って検証を行ったのですが、それでも介護施設で十分に力を発揮できることがわかったことで大きな手ごたえを得られたと同時に、こうしたフィードバックをいただいたことで、本当にやってよかったなって思いましたね。

こうした知見を重ねた後、2017年1月からDFreeの本格サービスがスタート。4月には大手介護施設グループへの導入が決まり、その後フランスでも本格導入に向けたトライアル運用も始まっています。

まだ完璧とは言えませんが、こうして普及が進んで排泄のデータが蓄積していけば予知の精度も高まり、より多くの方の役に立てると思っています。