漆さんはトライアスロンの世界選手権にも出場している。Photo by iStock
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奇跡の学校改革を遂げた校長が「日本には女子校が必要」と訴える理由

このグラフをみれば分かる

「女子教育」には理由がある

私が勤める品川女子学院は、一時期は1学年5人の新入生しかいなかった時代もありましたが、改革を進めた結果、数年後には入学願書がのべ1800名出るようにまでなっていました。

「今どき、改革をするのならなぜ共学にしなかったのか」と聞かれることがあります。確かに、改革の上で、女子校を共学に変え、成功した例はいくつもあります。

私立の女子校経営は非常に厳しいのが現実です。首都圏の私立中高は、男子校に比べて圧倒的に女子校が多く、共学もあります。女子の進学先は受験生の数に対して供給過多になっているのです。

また、私自身は共学校に通っていたので、共学ならではの良さもわかっていました。

それでも、なぜ女子校にこだわったのか。

従来言われてきた女子校のメリットは、「男女の成長カーブが違う時期に女子に手厚いケアができる」「女子のリーダシップが育つ」等ですが、私達にはその他に女子校であり続ける大きな理由が二つありました。

ひとつは、「卒業生の母校の理念を守りたい」ということ。

もうひとつは、今の日本だからこそ「女子教育が急務」であると確信していたということです。

創業1925年の歴史ある女子校。かつて中学の1学年が5人しかいなかったとは今はまったく思えない。
品川女子学院で奇跡の学校改革を成し遂げた漆紫穂子さん。偏差値20アップ、応募人数60倍、現在ではときには実倍率10倍の試験もある人気校となった改革は、一朝一夕でできたことではない。今回はその膨大な経験から学んだことを3回にわけて語っていただく最終章。第1回「できることを一歩ずつ」と始まった改革の骨子第2回は著書『働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと』からの引用も含め、そこから見えた「人を動かす4つの法則」について語っていただいた。最後の3回目となる今回は、漆さんの「教育への思い」が明確にわかる「女子教育にこだわる理由」を語っていただく。

必要なのは「復職力」

私自身は教員の家庭に生まれ、大学卒業後にすぐ教師となったため、「他の社会を見ていない」というコンプレックスを持っていました。生徒を社会に送り出すためには、自分も社会に視野を広げならないと、常に校外にもアンテナを立て、ネットワークを広げるように努めました。

そのような中で見えてきたのが、「日本は、先進国の中で珍しいくらい女性が活躍していない」という現実でした。

日本には、第一子出産年齢前後で女性の労働力率が下がり、その後復職して折れ線グラフに谷間が出来る「M字カーブ」現象があります。最近、この凹みが浅くなってきたことが報じられていますが、問題は中味です。「一番下の子の年齢別 母の仕事状況」を見ると、子どもの年齢が上がるにつれて働いている率が上がっていても、正規雇用はずっと2割台であることが分かります。

内閣府男女共同参画局HP「女性の年齢階級別労働力率の推移」より
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末子の年齢階級別にみた仕事ありの母の1日平均就業時間の状況厚生労働省HP「平成28年国民生活基礎調査の概況」より
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世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数では、昨年、日本は世界144カ国中114位と、過去最低を更新してしまいました。

 

しかし、このような現実を国や職場のせいにしても仕方がありません。出産や育児などでキャリアが中断しても、望めば元の立場に戻れるように、早いうちから準備をし、資格や専門性など「復職力」をつけておきたい。女子にこそ「未来から逆算した教育」が必要なのです。