伸び悩む業界はここだ

一方で、悩ましいのは課題の大きさと、ビジネスが成功して市場規模が伸びることとが当面はシンクロしない業界もまた存在するということである。

具体的には農業林業水産業、医療・介護業界や教育業界、住民サービスや上下水道などは市場規模が余り伸びないことが予測されている。個別にその業界の課題と市場規模が伸びない理由を解説していこう。

前段では紹介しなかった図2を見て頂きたい。集計カテゴリの定義が異なるため、家庭・個人やその他を除くと、伸びる業界はおおむね図1と同じように、製造・自動車や物流など市場規模が大きい傾向にあることことがわかる。

図2 CPS/IoT市場の利活用分野別の需要額見通し(日本市場)

出典:JEITA『注目分野に関する動向調査 2017』2017年12月

これに加えて、以下の図3の成長率と市場規模も合わせて見ると、図1では市場規模が伸びないと読み取れる業界も図1の10年後、2030年まで回帰分析して予測すればそれなりの規模感や成長率があることがわかる。

図3 利活用分野別の成長率と2030年市場規模(日本市場)

出典:JEITA『注目分野に関する動向調査 2017』2017年12月

  図1をベースにしながら 、図2、3からの示唆も踏まえて解説を進めたい。

伸び悩む業界(1) 農業・林業・水産業

農業・林業・水産業業界はIT化が遅れており、放置されてきた最たる領域だ。

2030年までを見た時には非常に高い成長率があるため、規模も大きくなると誤解しがちだが、そもそも現時点のIT化・IoT化が極めて小さいため、結果として市場規模が大きくならないという予測となっている。

 

一方で地方の現場に足を運ぶと課題が山積して、過疎化が進むエリアほどIoTというキーワードを意識せずに、高度化・IT化へと邁進している姿を目の当たりにする。

IT企業がなかなか足を運ばない、提案しないことが常態化している地方の田舎では、金額こそ小さいものの自分達で様々な取組を進めていたりする。高知県や熊本の天草などでは、養殖場の管理やビニールハウスの管理などで、地道だが堅実な遠隔監視の取組や自動化が行われている。

本来であれば、この1次産業の領域こそ大きなチャンスが眠っているのだが、効率的な展開を期待したいところだ。

伸び悩む業界(2) 医療・介護

図1においても図2、3においても2020年以降には相応の規模感になるが、それまではなかなか立ち上がっていかないのがこの業界だ。

労働集約型で個人情報への配慮や制約も大きく、IoT化によって取得できたデータをうまく活用することがやりにくい同業界では、PHR(Personal Health Record)をウェアラブルデバイスやセンサーデバイスで収集して個人に対して活用・提案をする、PDS(Personal Data Store)の整備や収益化が急がれる。

また介護現場でも、人手が足りず現場に負荷をかけない自動化や介助支援デバイス、監視などのサービスの普及が期待されている。