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米国「トランプ経済」の先行き予測がことごとく外れたのは一体なぜか

理由はこの数字にあった
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トランポノミクス発動で「ドル安」の怪

世界的な株高が続いている。米国で予算のつなぎ法案が上院で否決され、政府機関の一部が閉鎖され、株価の調整が懸念されたが、今回はほとんど材料にならなかった。これは、すぐに代替の予算案が上院で可決されたからだったが、それと同時に米国の大型減税の経済的な効果に対する高い期待がいまだに株式市場に織り込まれ続けているのであろう。

思い起こせば、昨年のちょうど今ぐらいのタイミングで、筆者はNHKの「日曜討論」と「NHKスペシャル」に出演させていただいた。テーマはいずれも、トランプ政権の経済政策に関するものであった。

筆者はエンターテイメント性に富んだ論評をあまりしないので、このような機会は滅多にないが、この時にお呼びがかかった大きな理由は、日本のエコノミストでは唯一、トランプ政権の経済政策「トランポノミクス」に対する評価がポジティブであったためらしい(この点については、昨年上梓させていただいた『ザ・トランポノミクス(朝日新聞出版社)』で詳述させていただいた)。

これに対して、圧倒的大多数の識者は、「米国がほぼ完全雇用の状態の中でのトランポノミクス発動は、長期金利とドルの急騰をもたらすだけで、下手をすると米国経済に深刻なダメージを与えかねない」という考えだった。

だが、これまでのところ、長期金利、及びドルが急騰する兆しはない(長期金利はやや上昇してきているが、10年物国債利回りで2.6%程度と上昇幅は極めて小さい)。株価の上昇と米国経済のさらなる回復というシナリオは、現時点のところ、筆者が「ザ・トランポノミクス」で展開したものとほぼ同じである。

そして、注目されるのは、逆にドル安が進行している点だ。ここ数週間で、ドル円レートはやや円高ドル安気味で推移しているが、ドルはほとんどの主要国通貨に対して安くなっている。

FRBが公表しているドルの名目実効為替レートをみると、足元のピークは昨年(2017年)1月4日の128.42ポイントであったが、今年(2018年)の1月17日時点では117.61ポイントと約8.5%のドル安となっている。すなわち、多くの識者の見通しとは全く逆に、為替レートは、トランプ大統領の就任以来、ドル安に転じているのである。

 

マネタリーベースに着目すると

それでは、このドル安の理由は何か。

一般的に為替レートは「各国の金融政策の差」によって決まるといわれる。「各国の金融政策の差」というのは非常に曖昧な表現で、為替アナリストはこの曖昧な表現を利用して、その局面で都合のよい「金融政策の差」を持ち出すが、一般的には政策(もしくは短期)金利差が用いられる。

だが、昨年来、FRBは政策金利を段階的に引き上げてきた一方、日銀やECBは現行の金融政策(マイナス金利政策と量的緩和政策の組合せ)を続けている。従って、一般的な「金融政策の差」から考えると、とっくの昔にドル高に転じてよいはずだが、現実の為替市場ではドル安が進行しているのだ。

そこで、筆者が注目しているのは、マネタリーベースである。ドルの名目実効為替レートと米国のマネタリーベースを比較してみると、両者は連動している可能性が高いことがわかる(図表1)。

そして、さらにいえば、米国のマネタリーベースはドルの名目実効為替レートに約2週間先行している。すなわち、米国のマネタリーベースが大きく減少すると、その後、ドルの名目実効為替レートはドル高になる(例えば、2016年10月から2017年1月にかけてのドル高局面)。

逆に、米国のマネタリーベースが増加すると、その後、ドルの名目実効為替レートはドル安に転じる。両者にはそのような関係があると想定される。その意味で、このところのドル安には、米国のマネタリーベースの動きが深く関わっていると考えられる。

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