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中国のミスターGDPが記者会見で明かした「中国経済のスゴイ数字」

7年ぶりの好結果に思わず…

珍解答でクビが飛ぶ

寧吉喆(ニン・ジージャ)中国国家統計局長にとって、1月18日は、年に一度の晴れ舞台だった。この日ばかりは、部下ではなくて自らが記者会見に臨んで、前年のGDPの伸び率を発表する。その映像は、中国ばかりか世界中で、速報として報じられるからだ。このため、国家統計局長には「ミスターGDP」というニックネームがついている。

だが一方で、この日は寧局長にとって、鬼門でもある。この日だけは、カメラの前で内外の経済記者たちの鋭い質問に答えねばならないからだ。想定問答を準備しているとはいえ、何かおかしな回答をして、それでマーケットが下落したりすれば、クビが飛ぶリスクもある。

いまでも語り草になっているのが、2年前の出来事である。2016年1月19日、当時の王保安局長が会見し、「内外の下振れ圧力にもかかわらず、2015年の中国のGDPは6・9%増大した」と胸を張った。

すると英字紙『チャイナ・デイリー』の若い記者が挙手して、「中国政府が発表するGDP統計はでっち上げで、本当の成長率は5%以下なのではないか?」と質問した。その質問を聞いた王局長は、顔を真っ赤にして反論した。

「私も外部の人たちが勝手に邪推しているのは聞いているが、それらの評論には2種類あるのをご存じか。一つはあなたが指摘したように、国家統計局は経済統計を水増ししているという説。だがもう一つは、中国の経済成長があまりに目覚ましいので、国家統計局が実際の成長率よりも、控え目に発表しているというものなのだ」

この珍回答は、集まった記者たちを唖然とさせたばかりか、株価も下落した。そして北京では、たちまち次のようなアネクドート(政治小咄)がWeChatで広まったのだった。

<私たち中国人は、何と幸せなのだろう。今後、中国経済が悪化していき、財政部や国家発展改革委員会、それに中国人民銀行までもがサジを投げたとしても、最後には国家統計局がついているのだから>

この話には、続きがある。この珍回答をした一週間後の2016年1月26日、王保安局長は、「今晩7時から重要活動会議を開くから全員出席するように」と、国家統計局の幹部たちに一斉通知を出した。ところが本人は、同じく午後7時北京発パリ行きのエールフランスのファーストクラス・チケットを偽名で2枚予約しており、北京首都国際空港に待機させていた若い愛人とともに、ヨーロッパに亡命しようとしたのだ。

王局長は同日午後4時前、国家統計局から空港に向かって、専用車で出ようとしたところを、中央紀律検査委員会の部隊に踏み込まれ、あえなく御用となった。その後、欧米での多額の隠し資産が見つかり、いまは監獄にいる。

この一件を知った習近平主席は激怒し、経済分野における最側近(中学時代の同級生)の劉鶴・中央財経指導小グループ主任(中央政治局委員)に命じて、後釜を探させた。そこで劉鶴主任は、中国人民大学経済学部修士課程の同級生で、気心が知れた寧吉喆・国家発展改革委員会副主任を、習主席に推薦したというわけだった。

そんな経緯で、寧吉喆は不定期な異動によって、国家統計局長に就任した。以来2年間、「安全運転」に努めている。

 
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