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医療・健康・食

「小説でも現実でも、在宅介護は大変」医師&看護師作家の告白

【特別対談】患者とともに歩むために

医師であり看護師でありながら小説を書いている、南杏子さんと小原周子さん。医療と介護の今を知る現役ドクター&ナースが、それぞれの作品を通じて現場を語る特別対談――。

同じ小説教室にいた二人

小原 南さんの『サイレント・ブレス』は、切実、というのが読んだ印象でした。私の作品も同じ介護を書いていますけど、『サイレント・ブレス』ではすごくシリアスに書かれていますよね。こういう書き方もあるんだなと、とても勉強になりました。

筋ジス(トロフィー)の患者のお母さんが終わりの見えない介護から逃げ出したくなる気持ちはわかります。胃瘻(ろう)の詰まりを吸引して患者が嘔吐してしまう場面は目に浮かぶようでした。私もたまにやってしまうので。他にも、わかるわかると思わせられたところがたくさんあって面白かったです。

サイレント・ブレス』 水戸倫子は大学病院から、在宅で「最期」を迎える患者専門のクリニックへの“左遷”を命じられた。倫子はそこで死を待つだけの患者と向き合うことの無力感に苛まれる。けれども、いくつもの死と、そこに秘められた切なすぎる“謎”を通して、人生の最後の日々を穏やかに送る手助けをする医療の大切さに気づく。そして、脳梗塞の後遺症で、もう意思の疎通がはかれない父の最期について静かな決断を下す。現代の終末期医療の在り方を問う、感涙のミステリー。 定価 本体1600円(税別) 幻冬舎

 ありがとうございます。現場を知っている看護師さんにそう言っていただけるのは嬉しいです。

小原 この作品はもとは私と南さんが通っていた小説教室に提出されていたものですが、そのときにはミステリーの色はなかったですよね。

 ミステリーの部分はゼロでした。でも二年ぐらい掛けて手を入れましたから、日本推理作家協会が年刊で出している『ザ・ベストミステリーズ2017』に『サイレント・ブレス』から一編「ロングターム・サバイバー」を入れてくださったのはありがたかったです。

小原 私の作品もそういう面がありますけど、連作短編ではやはり個別の話の他に全体を流れるストーリーが必要ですね。

 そうですね。『サイレント・ブレス』では父の介護についてがそれです。話の順番をどうするかとかもかなり悩みましたし、二倍ぐらい書いた話を半分は捨てました。

小原 そうなんですか!

 

 小原さんの『新宿ナイチンゲール』も、原形は教室に出されていたと聞いていますが、私が入る前だったから読んでいなかったんです。でも、小原さんの作品にはいつも本音が炸裂していましたね。

本になった『新宿ナイチンゲール』も面白く読みました。主人公のひまりちゃんがいいですね。いわゆる白衣の天使じゃなくて、そこがリアルです。がめつくてずるくて、なんだか落ち着かないんだけど、応援したくなる。

嬉しかったのは、プロの力をもってしても介護ってこんなに大変なんだということが書かれているところ。主人公は「こんな患者はもう看ていられない」というようなことを何度も考えます。プロでさえそういうふうに思うのだから、現実に介護を担っていることが多い奥さんだったりお嫁さんだったりという人たちがそう思ってもいいんです。

愛情不足だとかいうように自分を責めている人が多いんですが、そんなふうに思わなくてもいいんだよという応援歌になっていると思います。かと言って生真面目な物語でもないんですが(笑)。

小原 患者もナースも、きれいなところは書きたくなかったんです。ナースの小説ってみんなきれいじゃないですか。高い理想を持っていたりして、私はやるわよみたいな。でも現実にはそんなナースはなかなかいないですよ。

 理想に燃えているナースがいたら、病院では浮いてしまいますか?

小原 そうですね。「あの人、ちょっとおかしいんじゃないの」と言われるんじゃないかな(笑)。

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