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簡単に納豆の匂いを軽減する方法を、科学的に考察してみた

日本人が知らない「こんな食べ方」

納豆、好きですか?

昔の納豆は臭かった。

筆者の少年時代、1970年から1980年頃の納豆にははっきりした匂いがあって、朝食の時に納豆を掻き回すとプンちょっと生臭い独特の匂いが漂ったことをハッキリと覚えている。だから、臭み消しに刻みネギをたっぷり入れて、生卵などを落としてご飯にかけて食べていた。

当時は、納豆は関東以北の食品であり、納豆になじみのない関西圏の人々には「あんな臭いもの、食べられるか!」と本気で怒る人もいた。納豆が好きな人には、あの匂いが食欲をそそると言う人も多かったが、やはり匂いのせいで納豆に手を付けない人もたくさんいた。

さらに、納豆を食べた後の口臭が気になるという人も多く、人と会う前は食べないことがエチケットとされるなど、納豆は臭いというイメージが定着していたように思う。

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現在の納豆にはほとんど匂いがないし、納豆は臭くて嫌だという人はほとんどいなくなった。納豆は臭いというイメージはいつの間にか払拭された印象だが、ここにくるまでに匂いのない納豆の開発をめざした製造業者の人々の懸命な努力があったことは特筆に値する。

それでもなお、わずかな匂いが漂う納豆が、外国人が嫌う日本の食品の上位にランクされ、外国人が日本通とされる条件に「刺身が食べられる」ことと並んで「納豆が食べられる」などと紹介されるのは製造者にとっては心外だろう。

人間に限らず、哺乳動物は食べ物の安全性を確認するため口のすぐ上に鼻があるので、食べ物の匂いには非常に敏感である。食べ慣れた食材の匂いは、安全性に問題がないことを知っているために特に気にならないが、なじみのない匂いがする食品には本能的な警戒心を抱く。

そうすると、いっそう注意深く匂いを嗅ぐことになるので、よけいに匂いが気になってしまう。発酵食品は、食品に微生物を繁殖させて作るので腐敗とは紙一重であり、さまざまな匂い成分が生成されて複雑で独特の匂いがする。外国産のものなど食経験のない発酵食品は匂いが気になって食べにくい理由はこのへんにある。

臭いにおいを消す方法は?

納豆の匂いを消す食べ方として、酢の物にする、キムチを混ぜる、揚げ物にするなどさまざまな方法が紹介されている。これで美味しく食べられれば文句はないが、納豆が主役の座を降りているようにも思える。そこで、簡単に納豆の匂いを軽減する食べ方を科学的に考えてみた。

納豆の製造工程では、蒸した大豆に生育する納豆菌が大豆のタンパク質を分解して各種のアミノ酸が生じる。納豆菌の生育に伴ってネバネバの成分であるγ-ポリグルタミン酸を生成するとともに、さらにアミノ酸が分解して匂いの成分であるピラジン類やジアセチルおよびアンモニアなどが発生する。

このような成分の多くは弱塩基性である。塩基性の化合物は、酸性の環境にすると中和されて揮発しにくくなる。匂い成分も空気中に揮発しなければ鼻に届かないので、匂いを感じることもない。それでは、納豆を少しだけ酸性にしてみてはどうだろうか。

市販の納豆にはたれが付きものである。納豆自体は味が乏しいので、鰹節などの出汁と醤油などを混合したたれが工夫され、味と香りを加えている。納豆を食べるときには、良く掻き回して空気を十分に含ませ、ふんわりした食感を楽しむのが王道である。

 

さて、納豆を少しだけ酸性にする一工夫である。納豆1人前(約40 g)に付属のたれを加え、さらに小さじ2杯程度のポン酢醤油を加えてみよう。やや水っぽくなるが、掻き回すとポン酢の香りがほのかに漂い、ほどよく泡だって糸を引く。

醤油はpH4.7 – 5.0程度の弱酸性だが、ポン酢醤油は食酢が配合されているためpH3.6 – 4.0程度で醤油よりも酸性度が強く、さらに柑橘類の香りが加わるため納豆の匂いが覆い隠される。食してみると、納豆の味わいが十分保たれているのが分かるだろう。