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「スマホ育児は子どもに悪影響」があまりに短絡的と言える理由

世代間連鎖を防ぐ子育て論(8)
信田 さよ子 プロフィール

ゲームソフトはありとあらゆる工夫をして関心をひくように作成されていますが、プログラミングされた世界は現実の人間関係に比べれば「確実」で予測可能です。

いっぽう、生身の人間関係は賭けなのです。そのギャンブル性は、生きた人間は「他者」であることから生まれます。

相手がどう出るか、どんな反応をするかは予測可能ではありますが、100%ではありません。

この不確実性、不透明性こそが「他者」性であり、じつはそれにまさる楽しみはないのです。

キャンプ活動でのメンターとの関係から、「他者」とまじわることの楽しさや満足感を味わった若者たちは、それはゲーム・ネット依存の世界では決して味わうことのできないものであることを知るのです。

 

子どもを生き生きさせる「アイ・コンタクト」

最後に、前半で述べたアイ・コンタクト(目を合わせること)について説明しましょう。

育児とは正反対に見える介護の世界で、その驚異的な効果が注目されたのがフランスで誕生した「ユマニチュード」です。

日本では2015年に紹介され、認知症の人たちが生き生きと話し歩き出す姿が紹介され、介護の世界だけでなく、テレビでも紹介されて話題になりました。

詳細は『ユマニチュード入門』(本田美和子/イヴ・ジネスト/ロゼット・マレスコッティ、医学書院)を読んでいただくとして、大きなポイントは「視線をつかまえる」点にあります。

介護者は、通常それほど介護する相手の目を見ることはありません。しかしこの方法では、ゆっくりと耳元で相手の名前を呼び、その視線をつかまえるようにします。

これはアイ・コンタクトより積極的で、泳がせている視線の先に顔を寄せて、文字通り「つかまえる」のです。

この研修会に参加したとき、育児と同じだと思いました。子どもの名前を呼び、視線を合わせる。このことが、人間として扱われる基本なのです。

Photo by iStock

認知症とされて半分寝たきりのひとたちが、名前を呼ばれ、視線を合わせて間近で見つめられると、生き生きと表情をよみがえらせるのですから。

親と楽しく食卓を囲んでごはんを食べる、両親が話し合う姿や仲良くしている姿を見る、親が自分の目を見て話してくれる、忙しくてもちゃんと遠くから目を見つめてくれる。これらがどれほど子どもたちにとって大切なことでしょうか。

そのような現実が、時間は短くても一日の生活の中に保たれていれば、スマホ育児をいたずらに怖れることはない、そう思っています。

(過去の記事はこちらからお読みください→http://gendai.ismedia.jp/list/author/sayokonobuta

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