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「スマホ育児は子どもに悪影響」があまりに短絡的と言える理由

世代間連鎖を防ぐ子育て論(8)
信田 さよ子 プロフィール

「スマホ育児」は一過性のもの?

テレビがそれほど一般的でなかった時代には、あの強烈な刺激とチャンネルの多さ、画面から流される情報の受け止め方をめぐって危惧を抱いた人は多かったようです。

テレビは国民の「一億総白痴化」を促すという、評論家・大宅壮一の言葉は有名です。

現在ではむしろ若者のテレビ離れが指摘されるようになったことを思うと、隔世の感があります。

スマホ育児をめぐる議論を見ていると、半世紀前のテレビをめぐる議論とほとんど変わらないようにも思えるのです。

技術の進歩・革新が起きるとき、このような議論は必ず生じるのではないでしょうか。

多くの専門家やオピニオンリーダーが警鐘を鳴らしても、生活が便利に、そして快適になる変化は誰にも止めようがないのです。

いくら自然派を気取ろうと、いまさら水洗トイレからくみ取り式に後戻りはできないでしょう。水道の蛇口から水が出る生活から、井戸水を汲み上げる生活に戻ることなど不可能なように。

若い人たちの中には、テレビどころかPCすら持たず、スマホで代用している人が増えているといいます。

50年の歳月を経てテレビ離れが始まっていることを考えると、インターネットやAIが、10年後にはどれほど生活を変えているでしょう。

Photo by iStock

「スマホなんて必要ない」「むずかしそう」と拒否していた前期高齢者である友人たちも、ここ1~2年でほぼ全員ガラケーを卒業しました。

これからは、高齢者ほどインターネットを駆使できなければならないと思います。足腰が弱った高齢者も、ネット環境の進歩によって社会参加はずっと容易になるからです。

そのように考えていくと、スマホ育児という言葉そのものがいずれ消滅するのではないかと思います。

排気ガスをまき散らすと考えられたモータリゼーションも、今では鉄道よりはるかに小回りの利く交通手段として、宅配をはじめとする物流の中心機能を担うようになっています。

同じくスマホだって、人間が考え出したものである以上、それを使いこなすように人間自身が変化していくに違いないからです。

並行して、そのリスクを低減するような科学技術が駆使されるようになるでしょう。その先駆者がひょっとして現在の赤ちゃんたちなのかもしれないのです。

何しろ、生まれたときから、泣き止まないときはスマホで胎内音を聞かされ、タッチするたびに変わる画面に笑い興じて育っていくのですから。

 

ゲーム・ネット依存という深刻な問題

それはあまりに楽観的過ぎるんじゃないの、という批判もあるでしょう。

多くのひとの危惧するもののひとつがゲーム・ネット依存の問題ではないでしょうか。

1970年代からアルコール依存症にかかわってきた立場から、ここで少しゲーム・ネット依存について説明してみましょう。

2009年に『ネトゲ廃人』(芦崎治、リーダーズノート)という本が出て話題になり、にわかにゲーム・ネット依存が注目されるようになりました。

あれから9年経ちましたが、事態はますます深刻化しているといっていいでしょう。

世界保健機構(WHO)は、今年6月公表予定の最新版国際的疾病分類(ICD-11)に、ゲーム症・障害(Gaming Disorder)を新たに盛り込む予定だと発表し、それに対してアメリカや日本のゲーム関係者から反論も出されて話題になっています。

日本では公的に調査はされておらず、日本にどれほどのゲーム・ネット依存者が存在するのかはわかっていません。

しかし、カウンセリングの現場では、すでに10年以上前から「息子が不登校・ひきこもりで、それと並行して、ゲームばかりしていて昼夜逆転している」といった家族(主として母親)からの相談は多かったのです。

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