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3兆円投入は本当に必要なのか?「リニア談合」でやっぱり残る疑問

特捜部の目算は狂ったようだが…

東京地検特捜部の「誤算」

リニア中央新幹線の工事を巡る独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑の捜査を続ける東京地検特捜部の目算が狂い始めた。

捜査対象企業は、大林組、大成建設、清水建設、鹿島建設のスーパーゼネコン4社。公正取引委員会に対するJR東海の内部告発(後述)情報を得ていた特捜部は、まず大林組に偽計業務妨害容疑で捜査に入って大林組を揺さぶり、課徴金減免制度(リーニエンシー)に持ち込んで証言を取り、他の3社にも認めさせて立件する方針だった。

だが、大林組以外が抵抗を見せた。

 

リーニエンシーは、最初に違法行為を自主申告した企業は、刑事告発と課徴金の全額を免れる。狙いがリニア談合摘発だったという意味で、「偽計の偽計」で捜査に入られた大林組が、「村の掟」に背いて自主(自首)申告した以上、他の3社も2番目で50%、3番目以降は30%の減額を受けられるリーニエンシーを利用すると思われた。

だが、3社は申告見送りを決めたようだ。最終的な判断は、申告期限の1月22日までに下されるが、「営業活動の一環として話し合いはしたが、受注調整はしていない」と、談合を否定する可能性が高い。

9兆円の大事業という久々に特捜部らしい大型案件。しかも、3兆円の財政投融資が投じられているという意味で国家プロジェクトである。「3・11」の東日本大震災以降、談合を復活させ、最高益を更新するスーパーゼネコンに一罰百戒を加える好機となった。

だが、本来、受注調整され、不当に取り引きを制限されているハズのJR東海には怒りの色が、そしてゼネコン業界には反省の色が見えなかった。

ひとつには調整を前提とする入札だからである。

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JR東海は、公募と指名の二つの競争見積方式を取っているが、いずれにせよ工事契約手続きでは、複数の業者から見積書と技術提案を受け、価格と安全面と技術面を総合的に判断して決める。

そこには、JR東海の、例えば子会社のJR東海建設を入れたい、といった思惑が入るうえ、受注調整役と指摘されるのは、各社の土木営業本部の技術屋であり、かつての専門職の「業務屋」と呼ばれる談合担当ではない。自分たちが行っているのは技術提案であり、そのためのすり合わせという意識が受注調整を否定させる。

加えてJR東海は民間企業である。偽計業務妨害の「名城非常口建設工事」でも、他の工区入札でもJR東海担当者の情報漏洩が指摘されている。

これもゼネコン側からすれば営業活動の一環であり、JR東海側にも、技術力のある意中の業者に取らせたい、という思惑や、子会社や関係会社に取らせたい(あるいはJVに参加させたい)、という狙いがあり、それが情報提供につながっているかも知れない。独禁法違反の摘発は、そうした民間の自由度を奪う事になる。

双方に、怒りと反省がないのはそのためだろうが、その“開き直り”を突破するためには、特捜部がリニア談合に着手した原点に返るべきだろう。

これは3兆円を投入した国家プロジェクトであり、談合調整が高値発注につながっていれば、将来の運賃を含めた国民負担増に直結する――。

となると、まず大前提としてリニア中央新幹線が必要かどうか、JR東海での位置づけを含めた検証が必要となる。JR東海関係者の率直な意見を聞こう。

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