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「婚活」を焦るあまり人生を読み間違えた女の悲劇

育てられない母親たち【14】
石井 光太 プロフィール
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離婚するまで待ってくれ

「ごめん、すぐには結婚できないんだ」

なぜ、と思った。彼はつづけた。

「実は内緒にしていたけど、俺、結婚してるんだ。子供もいる。でも、いま離婚の話を進めている。近いうちに別れられると思うけど、法律的に結婚はできない。離婚するまで待ってくれないか」

中絶して尚貴の離婚を待つという選択肢もあっただろう。だが、萌は焦っていた。今中絶したら次いつ妊娠できるかわからないという思いもあった。それで、彼女は先に一人でお産をして、彼が離婚してから籍を入れることにした。

これが転落のはじまりだった。

萌はシングルマザーとして子供を産んだ。娘だった。遅くとも3ヵ月以内には結婚できると思い込んでいた。尚貴自身もそう語っていたからだ。

しかし、尚貴は一向に離婚へと踏み切らなかった。「離婚を切り出したら、膨大な慰謝料を請求された」「嫁の親が世間体を気にしていて離婚を許してくれない」「子供が病気で入院していて話ができない」などその都度言い訳をするのだ。認知してくれと頼んでも返事を渋る。

半年、1年と経ち、娘はどんどん大きくなっていった。立ち上がって「ママ」と言うようにもなった。職場からは、そろそろ仕事に復帰してくれという声がかかる。もし今のまま保育園に上げれば、娘は自分に父親がいないことを理解するだろう。なぜ、と訊かれてどう答えればいいのか。

photo by iStock

萌が悩んだ末に出した決断は、尚貴にプレッシャーをかけるために、マンションを購入しようというものだった。何の相談もせず、尚貴が会社に通勤しやすい場所に30年ほどのローンを組んで3LDKの部屋を購入したのである。そして、こう言った。

「あなたが離婚したあと、私と娘が住めるところはある。慰謝料を払ってもいいから、すぐに別れて」

尚貴を追い込めば結婚の道が開けると思ったのだ。

だが、尚貴からの答えは残酷だった。

 

「勝手なことすんじゃねえよ。俺にだっていろいろ事情があるんだ」

「私にも事情があるもん」

「知るかよ。お前は自分勝手すぎるんだ。俺はもうお前とは結婚できない。子供も認知しない。俺の前から消えろ!」

「そんな。だってあなたが離婚してくれるっていうから産んだのに」

「その時はそう思ったよ。でも、勝手に物事を進めたのはおまえだろ。俺には責任はない」

尚貴はそう言って萌を切り捨てた。一言でいえば、都合よく遊んだだけだったのだ。

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