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「新元号」報道から見えてくる「官邸vs宮内庁」の対立構造

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「パレードをしたいと考えておられる」?

では、あらためて皇室会議が開かれた翌日(12月2日)の一般紙の報道をみてみよう。

読売『天皇陛下19年4月末退位』『5月1日改元』

毎日『退位19年4月30日』『5月1日即位・改元』

他紙も同様。予想されたように「4月末退位」で意見が固まった。

ここで、各紙の解説を読んでみると「ある言葉」が偶然にも使われていたのである。それは、

「寝耳に水」

であった。

まず『産経新聞』。やはり「官邸側」の解説に読みごたえがある。

《昨年7月のNHKのスクープに官邸は衝撃を受けた。「寝耳に水」だったからだ。》(2017年12月2日)

NHKのスクープとは2016年夏の「生前退位のご意向」報道のこと。あのあと官邸と宮内庁との攻防があったと解説する産経。

続いて日本経済新聞。「皇室の事情 官邸のメンツ」「退位時期巡り浮彫り」という見出しの下にこの言葉が。

《4月末案、寝耳に水》

日経は今回の宮内庁側の衝撃を「寝耳に水」と解説したのだ。

すごい、すごい。

同じ日の新聞で、官邸と宮内庁の気持ちをそれぞれ解説したら「寝耳に水」。見事に同じ表現が重なったのである。

つまり、一昨年はNHKのスクープ(宮内庁の仕掛け)に官邸が衝撃を受け、今回は退位4月末案(官邸の仕掛け)に宮内庁が衝撃を受けた。両者とも「寝耳に水」を味わった。

なんという情報戦、化かし合いだろうか。読者の私は戦慄を覚えるしかなかったのである。

さて、このあと『週刊新潮』がまたしても皇室記事を載せて波紋を呼んだ。

photo by gettyimages

『「安倍官邸」に御恨み骨髄「天皇陛下」が「心残りは韓国……」』(12月14日号)

注目されたのは最後のくだり。またしても「官邸関係者」が語る。

《最近耳にしたのが、陛下が華やいだ雰囲気で皇居を去りたいお気持ちを持っていらっしゃるということ。具体的には、一般参賀のような形で国民に対してメッセージを発し、そのうえでパレードをしたいと考えておられるようです。その一方で官邸は、粛々と外国の賓客も招かずに静かにやりたいという考えがあって、そこで宮内庁とせめぎ合いをしていると聞いています》

この、陛下が「パレードをしたいと考えておられるようです」という部分に宮内庁が反応した。

『「週刊新潮」(平成29年12月14日号)の記事について』(平成29年12月14日)と題し抗議をしたのだ。

《華やかなものをお考えとはとても考えられないことです。》

《事実に全く反するものであり,これを陛下のお気持ちであるかのように報ずることは,国民に大きな誤解を与えるもので,極めて遺憾です。》

期せずして『週刊新潮』の「官邸関係者」がまたもやキーポイントになったのだが、これはかなり興味深い。

「官邸対宮内庁」の攻防の図式が一般紙でも報道される中、週刊新潮で「官邸関係者」の言葉が発信されたのだ。

 

片や「〝朝日の報道と逆にしたい〟」(11月30日号)であり、片や「(陛下が)パレードをしたいと考えておられるようです」(12月14日号)。

前者は「退位日程変更が官邸の目論見通りに4月案になり、余裕のタネ明かし」に見えるし、後者はさらに宮内庁を挑発しているように見える。さすがに「パレード」のくだりに関しては宮内庁が反論してきた。これもまた終わらない情報戦なのだろう。

というわけで新聞、夕刊紙、タブロイド紙、週刊誌を読み比べるだけで「退位日程」をめぐる激しいやりとりが強烈に匂ってきたのである。

先週、安倍首相は新元号について「広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に深く根ざすものとしていきたい」と述べた(『読売新聞』1月16日)。いよいよ元号の中身も動いてきた。

新しい元号の候補には「新潮」「朝日」を入れておきたい。あ、「朝日」は絶対にないか。

それなら「寝耳」を入れておこう。

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