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「世界で一番権力のある女性」の足もとを揺るがす難民問題

ドイツはこのまま内側から崩壊するのか
川口 マーン 惠美 プロフィール
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ドイツの政治家とメディアは、これまで難民の犯罪をひた隠しにしてきた。難民の犯罪率は平均よりも高いわけではないというのが彼らの見解で、それに異議を唱える人には、たちまち「ポピュリズム」「人種差別」「外国人排斥」といったスタンプが押された。テレビの討論番組で、AfD(ドイツのための選択肢)の政治家が少しでも治安の悪化を示唆しようものなら、キャスターが「そんな統計はない!」とたちまち遮った。

しかし、昨年末には、すでにその空気は変わっていた。だから、メディアは堰が切れたように、毎日、この殺人事件を報道した。加害者の少年の年齢にも疑いがかかった。

警官は残業に次ぐ残業

信じがたいことだが、ドイツは一時、身分証明書を持たない難民も無制限に受け入れたので、年齢や出身国が本人の主張通りになった。

たとえば、モロッコやチュニジアなど北アフリカの国からの難民は、通常、難民とは認められず、母国に戻らなければならないが、未成年に限っては、滞在を容認されることが多い。ましてや、シリアやアフガニスタンなど、本当に紛争の起こっている国から来ている難民の場合は、未成年ならほとんど確実に資格を取れる。

そして、資格が取れれば家族を呼べる可能性も高いため、難民の間では、「まずは『未成年』を送り込む」という作戦が取られた。だからドイツには、とてもティーンエイジャーには見えない「未成年」の難民が数多くいる。当然、今回の容疑者である少年にもその疑いがかかった。

手の骨をレントゲンで調べると、おおよその年齢を特定できるそうだが、ドイツでは現在、それは行われていない。ドイツ医師会も、医療目的でないレントゲンは健康を害するとして反対している。しかし今、その検査を徹底的に実施すべきだという声が高くなっている。とはいえ、そうなるとまたお金がかかる。ドイツ人は、どんどん膨らんでいく出費を前に、意気消沈している。

 

そして新年。2年前の大晦日に地獄のようになったケルンだが、今回は集団婦女暴行も起こらず、カウントダウンのパーティーが「ほぼ平和裡に」終わったと、まるでめでたい話のように伝えられた。

ただし、その本当の理由は、1400人の機動隊が出動して、駅前広場を要塞のようにしたこと。そして、なにより、多くの女性たちが夜中に街に繰り出すのを控えたからだ。

しかも実際は「平和裡」でもなかった。多くの都市では、集まった男たちが警備の警官や消防署員を攻撃して憂さ晴らしをし、負傷者が出た。一部は重症だという。ケルンでも、ロケット花火で狙い撃ちされ、警官が目を負傷した。ザクセン州のライプツィヒ市では、放水車まで出動した。翌日、警察組合の会長は、「同僚に対する攻撃は生命を脅かすレベルまで行った」と強く抗議した。

現在、ドイツでは、大晦日だけではなく、常に、あらゆるところで警官がパトロールしている。シュトゥットガルトでもそうだ。警官は残業に次ぐ残業で疲労困憊という。内務省は「国民の安全のため」、警官の大幅な増員を発表したが、そうなると、やはり莫大な経費がかかる。

〔PHOTO〕gettyimages

1月3日には、犯罪学の専門家であるクリスチャン・プファイファー氏が、2014年から16年にかけてニーダーザクセン州の犯罪が10.4%増し、増加分の92.1%は難民によるものだと発表した。政府の依頼でまとめた統計だ。

犯罪者の出身国は、モロッコ、アルジェリア、チュニジアが極端に多く、これら3国からの難民数は全体の0.9%に過ぎないのに、犯罪の17.1%が彼らの手によるものだった。ただ、実際には、婦女暴行、および暴行事件は、難民の間で一番多く起こっているという。しかし、その場合、ほとんど届け出がないため、数字には出ない。

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