中国

中国「大物政治家」のスキャンダルを暴露し続けた大富豪の狙い

民主化の星か、中国版籠池氏か…
安田 峰俊 プロフィール
このエントリーをはてなブックマークに追加

後ろ盾がなくなりそう…?

すこし意地の悪いインタビューだったが、元ネタの郭文貴が謎に包まれた人物である以上、質問が厳しい内容になるのは仕方ない。こころよく取材に応じてくれた楊建利氏にあらためて感謝を申し上げたい。

まとめて言えば、中国民主化運動家の一部には、郭文貴の「爆料」の真偽にかかわらず、それが中国共産党に痛撃を与えている事実を高く評価する動きがあるということだ。いっぽう、なんでも喋っているように見える郭文貴は、彼なりに極めて戦略的に叩く対象を絞っている。

 

その理由が保身なのか、まだ中国国内に存在するなんらかの後ろ盾の意図を受けたものなのかは第三者が知り得るものではないが、「維権」(権利の保全)というきれいごとでは説明できない理由がひそんでいることは間違いない。

むしろ「反共産党」という一事だけを理由に、怪しいパワフル大富豪に対して無邪気にベットしてしまう中国民主化運動の側の姿勢に、一抹の不安を感じてしまうのは私だけだろうか。

※11月21日、今日も元気にYoutube動画を配信した郭文貴。背景の豪奢な部屋の様子からもわかるように、亡命後も経済面では特に困った様子がない。

もっとも郭文貴や、楊建利氏らが率いる公民力量は2018年の年明けから予期せぬトラブルに見舞われている。

そのキーマンとなるのは、かつて首席戦略官兼上級顧問としてホワイトハウス入りし、公職を退いてからもトランプ政権に一定の影響力を持つとされてきたスティーブ・バノンだ。

元政商・郭文貴や一種の華人ロビイスト集団でもある公民力量はそれぞれ昨年春ごろから、自分たちの政治目的を達成するべく、ホワイトハウスへの影のパイプであるバノンに接近してきた。

郭文貴は昨年1年間でバノンと10回以上会って、独自の新たなネットメディア展開をぶち上げ、楊建利氏ら公民力量のメンバーは昨年11月・12月のバノン来日にそれぞれ同行してなかば秘書のような役割を務めるなど、相当の提携関係を持っていた。

ところが、年初に刊行されたトランプの暴露本『Fire And Fury(炎と怒り)』で、バノンが政権批判を記者のマイケル・ウォルフに対して語っていたことが判明。トランプが激怒し、バノンに対して完全な「縁切り宣言」をおこなったのである。

アメリカでの郭文貴は、かつて中国大陸で党高官たちをたらしこんだように政権中枢への接近を図ったのだが、どうやらトランプ政権があまりにも「斜め上」だったため、上手く行かなかったらしい。

後ろ盾だったバノンが消えたことで、郭文貴の立場は大いに不安定化したと見られ、結果的に彼の暴露におびえる中国共産党の高官たちにとっては非常にありがたい事態が訪れているようだ。

郭文貴は今後も、きわどい暴露をおこない続けることができるのか。筆者の心配をよそに、彼は今日も元気にYoutubeを更新し続けている。

記事をツイート 記事をシェア 記事をブックマーク