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『スター・ウォーズ』ヲタの市川紗椰がハマった神話の世界

「市川紗椰が現代新書を読んでみる」
市川 紗椰 プロフィール
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神話は物語として普通に面白い

一方のローラシア型は、ストーリーがしっかりしていて入り込みやすいものが多いです。原初巨人や世界卵、釣針神話などが紹介されていますね。そして改めて思ったのですが、同じキャラクターが別の神話に出てくるとスピンオフみたいな感覚で読めて、楽しいですね。「マーベル・コミック」みたい、というか(笑)。

ローラシア型の神話には社会の不平等を正当化する目的があった、という指摘も本書の中にありました。当時の人は、「死」とか「不平等」に対して、何かストーリーを紡ぎだして納得しないと辛かったのでしょうね。そして、どの神話にも「不死」である神との対比の中で、人間は人間として分をわきまえていこうというメッセージがありますよね。私もわきまえなきゃ、と思って(笑)。

世界中の神話で広範囲に見られるのが「洪水神話」だと書かれていて、読んでいて思い出したのは「ネットのデマ」についてです。仮にその情報が嘘でも、別の3つの場所でその情報が流れると真実になるという話を聞いたことがあって。洪水が本当にあったかどうかはどうでも良くて、複数の場所でその神話が語られていることに価値があるんですよね。

あと、最後の章のまとめが面白かったです。今の時代に神話は必要なのかというと、エンターテインメントとして面白いということはあるのかもしれませんが、そもそも現代は神話に答えを求めていないですよね。

そんな中、神話を通じて世界中が繋がっていると思うことで、許せるものがいっぱい増えるなということは感じました。排外主義的な考え方が台頭している今の時代には、「元をたどれば一緒」という考えはシンプルですけど大事ですよね。

一方で、たしかフロイトが言っていたと思いますが、「類似しているからこそちょっとした違いが許せない」というのが人間の性。隣の国の人ほど仲良くできない。「一部の人間の判断で他――それが動物でも人間集団でも――を抹殺することは自らの破滅につながる」(p270)というのは同感で、だからこそ、人類が真の意味で繋がりあうにはどうすれば良いか、その先の答えも知りたいなって思いました。

神話は物語として普通に面白いんですよ。最近ではゲームやアニメにも神話をベースにしたものが増えてますね。私が好きな『スター・ウォーズ』にも神話的な要素があって、普遍的な物語が背景にあるからすんなりと設定に入り込めるというのはあるでしょうね。

『スター・ウォーズ』について取材を受けることも多いのですが、何が好きかというと、ほどよく設定に穴があるところ。妄想を膨らませる余白があるというか。「”同人”の余地がある」という表現を良くするんですよ。

自分の中で「この話のサイドストーリーはなんだろう」とか「この人はどういう種族でどんな過去があって……」というのを考えて遊べるのが『スター・ウォーズ』なんです。世界観の懐が深いんですよね。まぁ、初期の作品に関しては特撮の技術が好きっていうのもあるんですけど。

 

『スター・ウォーズ』のストーリーはまさに王道で、ルーク・スカイウォーカーの英雄譚。そして、レイア姫が出てきたら男子が「可愛い!」と思うとか、ベタなお約束がしっかりしている。世界観がちゃんとしている作品は安心して楽しめますね。

やっぱり、人類共通の感性や考え方みたいなものがあると信じたいです。たとえば、月にはウサギがいるって言いますよね。日本や韓国、台湾とかもそう。アメリカにはウサギはいないんですけど、おじさんがいるんですよ。「Man in the moon」と言います。多分人間には、月に誰かがいると信じたいっていう共通の思いがあるんじゃないでしょうか。

人は皆そういう心を持っていると信じたいです。科学的には解析できないもの―――神話の魅力は、そういうところにあるのだと思います。

<連載第2回につづく>

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