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米元国防長官が証言「北朝鮮が勝ち目のない戦争に入り込む可能性」

【特別寄稿】交渉当事者だけが知る真実
ウィリアム・J・ペリー プロフィール
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中国をパートナーにするしかない

我が国の外交は北朝鮮に核開発を断念させることに失敗し続けてきた。そして、それを最重要の到達点とする限り、これからも失敗し続けるだろう。しかし、核兵器が生み出す危険を減らすために、実行可能な外交の選択肢はほかにもあるはずだ。

北朝鮮がすでに使用可能な核兵器を保有している以上、私が外交当事者として交渉にあたっていた90年代以上に強力な外交パッケージを用意することなしには、核兵器の放棄を期待することはできない。

そしてそうした強力なパッケージを手に入れるためには、中国を交渉のパートナーとして迎えることが絶対不可欠だ。なぜなら、食糧や燃料の支援を断たれる脅威のように、経済活動を妨げる外交パッケージを北朝鮮に突きつけるには中国の協力が必要だからである。

しかし、そうした類いの協力を中国から引き出すためには、金正恩体制そのものの崩壊を狙う行動には出ないこと、もし仮に体制が何らかの理由で崩壊したときでも、アメリカは部隊を中国に近づけないことを確約しなくてはならないだろう。

 

当事者だから得られた「決定的な教訓」

ただし、たとえこれほどの外交パッケージを用意できたとしても、我々が得られるのはせいぜい、核兵器と長距離弾道ミサイルのあらゆる実験を停止するための基本合意くらいかもしれない。

この合意は我々が数十年かけて追い求めてきたものとはまったく異なるが、それでも締結する価値はある。我々が直面する目の前の危険を減らし、北朝鮮の核開発を後戻りさせる次なる合意の土台となるからだ。

こうしたアプローチを採用するよう熱意をもって各国に働きかけることは、私にはできない。しかし、これに代わる現実的な手段は、もはや軍事力の行使しか残されていないのである。ただしその際、北朝鮮はいかなる戦争にも勝てない代わりに、敗北の寸前に韓国と日本に恐るべき破壊をもたらすことができるのを忘れてはならない。

北朝鮮は世界で最後のスターリン主義体制国家であり、当然ことながらそれは我々が逆毛が立つほど嫌悪する存在である。しかしそれを承知で、北朝鮮との交渉当事者としての経験から私が得た決定的な教訓を、最後に皆さんに伝えておかなくてはならない。それは「我々がこうあってほしいと思うようにではなく、いまあるがままの北朝鮮に対処する必要がある」ということである。

<訳責/現代ビジネス編集部・川村力>

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