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米元国防長官が証言「北朝鮮が勝ち目のない戦争に入り込む可能性」

【特別寄稿】交渉当事者だけが知る真実
ウィリアム・J・ペリー プロフィール

北朝鮮の指導者たちは「狂っている」のか

いまの状況は明らかに危険であり、週を追うごとに深刻化していると思われる。ただし、私が危険だと言っているのは、何も北朝鮮が突如核攻撃を仕掛けてくるということではない。

北朝鮮の指導者たちが常にリスクを計算してきたことは、歴史が物語っている。韓国に対して法外な挑発行為をくり返し、自国民に情け容赦ない態度で臨むのは、まさにそういう(リスクが低いと判断しての)ことだ。

一部の人たちが考えているのと違って、北朝鮮の指導者たちは「狂っている」わけではない。北朝鮮は「ならず者」国家であり、世界でもほとんど孤立しているが、それでも指導者たちの行動には確かなロジックがある。その根本にあるのは、体制維持が何より最優先という約束だ。要するに「金(キム)王朝」を存続させることである。実際、彼らは万難を排してそれを実現してきた。

その点で、北朝鮮はアルカーイダやイスラム国(IS)とはまったく異なる。北朝鮮の指導者たちは自爆攻撃はしないし、殉教することも求めない。彼らが望むのは権力の座に居座ることなのである。もし核ミサイルを発射すれば、国は破壊され、自分たちは殺される、すなわち金王朝が終焉を迎えることを、彼らはよくわかっている。

 

金王朝が権力を失うことを覚悟したら…

核兵器を開発したおかげで、金王朝はかろうじて権力を維持できるだろう。もちろんそれを使わなければ、の話だ。

とは言ったものの、北朝鮮の核兵器はやはりきわめて危険だと私は考えている。切り札を持っていることで指導者が大胆になり、かつてないほどリスクの高い、自分たちの能力を超えた挑発行為に手を出しかねないからだ。

北朝鮮の核実験を報じる日本のテレビphoto by gettyimages

そうした挑発に耐えかねた韓国が軍事行動に乗り出せば、アメリカを巻き込んだより大きな紛争へとエスカレートしかねない。言ってみれば、北朝鮮がうっかり大きな戦争--勝ち目のない戦争--に入り込む可能性を否定できないのである。

そして、金王朝が権力の座から排除されるという帰結がはっきりしたとき、彼らは死に物狂いの最後の一手として、核兵器を使うだろう。私が恐れるのは、北朝鮮が自発的に始める戦争ではなく、そのように彼らがうっかり迷い込む戦争である。それは(核を保有しているからこそ)北朝鮮に内在する危険と言っていいだろう。

にもかかわらず、愚かなことに、強く脅威を感じさせるような派手で大げさな言葉を弄して騒ぎ立て、危険を煽ろうとする者がいる。北朝鮮は数十年のあいだ、そうした言葉が出てくるのを待っていた。そして最近になってようやく、そんな言葉を好き放題に並べ立てるアメリカの指導者が出現したというわけだ。

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