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日本経済がデフレ脱却間近である「証拠」を示そう

株価好調の理由は米国株高だけではない
安達 誠司 プロフィール
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設備投資と雇用のバランス

そこで、以上のように、「予想インフレ率」が2016年10-12月期以降、何故、上昇に転じたかである。上昇したタイミングとそのときの経済状況を考え合わせると、第一の候補は、「トランプ旋風」である。

2016年の米大統領選において、トランプ旋風が巻き起こって以降、大型財政政策出動の期待から米株高・ドル高が実現した。これにともない、日本株も低迷を脱し、上昇過程に入った。特に、日銀による「マイナス金利政策」実施以降、高まっていた円高圧力がこれをきっかけにほぼ払拭された点は、予想インフレ率の形成上も大きな効果があったのではないかと考える。

第二の候補は、「イールドカーブコントロール政策」である。2016年9月に導入が決定されたこの政策によって、政策金利だけではなく、10年国債利回りまでの長期金利がマイナスからゼロ近傍の超低金利状態に固定されたことが緩和効果を生んだ可能性は否定できない。

家計消費ばかりに目が向かうと、マイナス金利政策以降、金融政策の効果は全くないようにみえるが、ひょっとしたら、「イールドカーブコントロール」は、予想インフレ率と株価を引き上げることで設備投資の回復に一役買っている可能性もあるのではないか。

ドル円レートは、1ドル=115円を超える円安にはなかなかならないが、それでも予想インフレ率と株価は上昇し続けている。つまり、このところの予想インフレ率と株価の上昇は米国、及び為替要因では説明しにくい。

その意味で、筆者は、従来は「イールドカーブコントロール」の効果については懐疑的であったが、株高という「資産効果」を通じて実体経済に影響を与えた可能性があると考え始めている。特に、株高が「トービンのQ」を通じて設備投資を拡大させるというルートはリフレ政策の1つの波及経路である。

また、最近の消費動向をみると、可処分所得との連動性は薄れているが、株価、もしくは潜在キャピタルゲイン(これは、資金循環勘定の「調整」で示される)との連動性を高めているようにみえる(ただし、サンプル数が少ないため、実証的な検証はまだできておらず、「可能性」にとどまる点は留意いただきたい)。

 

2018年の日本経済にとって、設備投資は人手不足にともなう労働コスト上昇圧力を低減させるキーファクターである。もちろん、企業は利益拡大を賃上げという形で労働者に還元させることは大切だが、賃上げ圧力が高すぎると収益圧迫要因となり、再び、雇用抑制姿勢を強めることになりかねない。

設備投資と雇用がほどよいバランスで拡大していくのが日本経済にとって理想的な姿であり、ここまではこの理想的な姿に向かって進みつつあるようにみえる。そして、それが、現在の株高を支えていると考えられる。

日本経済にとっては、この「好循環」をしばらくの間は続けていくことが重要であり、経済政策の「正常化(=出口)」を焦るあまり、余計なノイズを与えるような政策変更を行うべきではないだろう。

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