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日本経済がデフレ脱却間近である「証拠」を示そう

株価好調の理由は米国株高だけではない
安達 誠司 プロフィール
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ところで、ここでの企業にとっての予想インフレ率は、「自社の製品・サービスの販売価格」の見通しをもとに筆者が推計したものである。具体的には、日銀短観における「販売価格判断DI」のデータを使用している。そして、この日銀短観の「販売価格判断DI」は、企業経営者が自社の販売価格戦略について、3択で答えたものを集計したものである(翌四半期に自社製品・サービスの販売価格を引き上げる予定か、引き下げる予定か、横ばいで据え置く予定か、という3択)。

予想インフレ率の議論をする場合、「企業が将来のインフレ率を予想して企業行動を決める訳がない」という批判を度々聞くが、企業にとって、自社の製品・サービスの価格をどのように設定するかは、売れ行き(消費者の需要)やマージン(利益率)を決める最も重要な経営戦略である。

自社の市場環境について、なるべく多くの材料を集めながら、自社製品・サービスの価格を如何に設定するかが、企業の存亡の鍵を握るのは言うまでもない。ここで用いる「予想インフレ率」は、このような個別企業の経営戦略の集計値と位置づけられ、日本経済全体の動向を考える上でも極めて重要な数字であると筆者は考える。

そしてこの「予想インフレ率」の動きは、2013年の4-6月期に底入れ反転して以降、2014年4-6月期までは順調に上昇してきた。だが、2014年7-9月期以降、低下に転じ、2016年7-9月期までは低下基調で推移してきた。

その水準は過去のデフレ局面と比較すると、マイナス幅はそれほど大きくなく、「デフレに逆戻り」というほどの低下ではなかったが、2014年7-9月期以降、明らかにデフレ解消の動きは鈍っていた。ところが、2016年10-12月期以降、「予想インフレ率」は再び反転し、上昇過程に入っている。これは、日本経済の先行きを考える上で好材料である(図表2)。

デフレ脱却はもうすぐそこ?

次に、日銀短観の「販売価格判断DI」の回答別の構成比をみてみる。

DIは、販売価格を引き上げると回答した企業数(の割合)から販売価格を引き下げると回答した企業数(割合)を引くことで求められるが、それぞれの回答割合にも重要な情報が含まれている可能性がある。

 

そこでそれぞれの回答数の割合をみてみると、直近(2017年10-12月期)では、販売価格を引き上げると回答した会社の割合は11%、販売価格を引き下げると回答した会社の割合は10%であった。

販売価格を引き上げると回答した会社の割合も過去と比較して高まってきてはいるが、より顕著なのは、販売価格を引き下げると回答した会社の割合が大きく低下し、デフレ局面では最も低い値となった点である。この割合は日本経済がデフレに陥る以前(1990年代前半以前)の平均水準に近いところまで低下している(図表3)。

これは、価格を引き下げることで売上高を伸ばすというかつての安売り型の企業戦略が通用しなくなりつつある時代に入ってきたことを示唆するものであり、日本経済がデフレ脱却間近のところまで来ていることを示している。

また、非常に興味深いことに、この「予想インフレ率」の動きは、株価の動きとも似ている(図表4)。両者の間には因果関係は存在しない(正確にいえば、お互いがある一定の距離感を保ちながら動くという「共和分」の関係にある)が、少なくとも、予想インフレ率が上昇を続ける局面では株価も同様に上昇過程を続ける可能性が高いことを示唆している。

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