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いま視聴率が取れるテレビドラマの傾向と「時代の気分」

2017年、最大の収穫は…?
堀井 憲一郎 プロフィール
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シリアスなのに、明るい

『奥様は、取り扱い注意』は、元一流スパイでセレブの奥様という設定からしてすでに「奥様は魔女」的なコメディ要素が入っており、ご近所の奥様のトラブルを超一流スパイの腕前で解決していく、1話完結のスーパーレディーの物語だったのが、終盤になって別の展開を見せた。

夫(西島秀俊)は彼女を監視するために近づいてきた公安警察官だったことがわかり、国家レベルで敵対していたことになる夫婦は、最終話で激しいバトルを繰り広げる。

書いていてなかなか馬鹿馬鹿しいけれど、戦う二人はなかなかかっこよく、清々しくもあった。そして、あくまで軽く、しかしシリアスさを残して物語は終わった。

感情移入できるキャラクターではなく、主人公は料理の下手な主婦ではあったが、あっというまに素手で敵を叩きのめすスーパーガールで、自己投影する対象ではなく、ハードボイルドなドラマだった。視聴者の共感は遮断されており、主人公やその仲間はどこまでもかっこよくて、そこが面白かった。シリアスな展開を見せてもどこかに面白みを帯びており、だから明るい。

楽しいのにドキッとさせられるドラマだった。

乾いているのに面白かった。

このあたりが、いまのドラマの流れなのだろう。

回復の物語

『過保護のカホコ』もまた、高畑充希演じる主人公が、かなり強烈な設定になっていた。

21歳になるまで、すべて母親の世話で育った主人公は、アルバイトもしたことなければ、外出着を自分で選んだこともなく、駅まで歩いて行ったことがなく必ずクルマで送り迎えされていた純粋培養の娘だった。

彼女を囲い込んだ母親は黒木瞳で、いわゆる毒母である。

2017年はそのあとも『明日の約束』やら『お母さん、娘をやめていいですか?』などにも毒母は続々と登場してきて、いまどきのわかりやすい〝悪役〟となっているが、このドラマはコミカルで乾いていたぶん、迫ってくる怖さがなかった。

高畑充希がとにかくよかった。ありえない純粋培養娘を演じて、ひょっとしてありえるかもしれないと一瞬でもおもわせる力があった。

最初はカホコをバカにしていた同じ大学の竹内涼真(役名は麦野初)も、カホコの純真さに心動かされ惹かれて一緒になる。恋愛ドラマふうであるが、純粋な恋愛とは違い、どちらかというと回復のドラマだったとおもう。

いまは、回復の物語も求められているとおもう。

 

不倫というより「浮気」

『あなたのことはそれほど』は、波留主演の不倫ドラマ。

東出昌大と出会って結婚したあとに、昔好きだった鈴木伸之と再会して浮気する。

「私は二番目に好きな人と結婚しました」というのがキャチフレーズになってたが、ドラマ展開としては、ふつうの不倫ストーリーである。

夫(東出昌大)は、落ち着いだ穏やかなキャラだったのだが、妻の浮気を疑い出してから性格が一変、というか怒りを表に出さないから異様なキャラクターに変身して、それは見ものだった。

主人公女性(波留)は、浮気はするのだけれど、あまりに何も考えていなくて、考えてないのはいいんだけど、悩みも逡巡もなく、するっと浮気をしていて、そういうのはかつてはサブキャラクターにはよくいたのだけれど、メインキャラになったことは珍しく、だから不思議にドライに仕上がっていた。

「乾いていて明るい」ドラマだった。

不倫というより「浮気」という言葉がしっくりくる感じで(不倫の不という否定形が似合わない)、浮気は浮気だけど、そもそも「本気」というものはないんじゃないか、という軽い主人公キャラが新鮮だった。

軽くて、明るそう。明るい、というわけでもなく、明るそう、だった。あまり中身がない。

深みを求めていないぶん、かえって底知れない部分を感じてしまう物語で、ひとつ違うとスリラーじみてくるのだけれど(人間のしわざに見えないから)、そこんところはコミカルさでごまかしていて、最後まで見られた。

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