メディア・マスコミ 日本

大相撲行司セクハラ事件、式守伊之助の言い訳に潜む「2つの問題点」

人権よりも協会ルールが大事なのか
原田 隆之 プロフィール

相撲協会が本当にすべきこと

まず、人権意識については、現代の人権の考え方などに対して、頭が古くて固い理事長や理事も含めて、全員が専門家による研修を受けるべきである。

そのなかでは、パワハラやセクハラ、LGBTや差別、こうした問題について幅広く最新の知識を学ばなければならない。

当事者を呼んだり、事例を聞いたりしながら、一方通行の受け身的な研修にならないように、当事者意識を持ってグループ討議やワークショップなどを実施すべきであろう。

また、飲酒や暴力に関しては、知識だけを植え付けても何の役にも立たない。先に説明したように、飲酒行動を自分の意志で統制ができないのが、アルコール依存症の症状である。「わかっちゃいるけど、やめられない」のだから、いくら当たり前のことを説いたとしても、何の解決にもならない。

〔PHOTO〕gettyimages

暴力にしても同じである。頭では暴力はいけないとわかっていても、暴力を振るう者は、何かと理由をつけて、「振るってもよい暴力」を作り上げるのが常である。理事長講話など、馬の耳に念仏もいいところだ。

アルコール依存にしても、暴力にしても、きちんと専門家に委ねて、科学的な根拠に基づいた対処や治療をすべきである。なぜなら、現代において依存症や暴力は、「公衆衛生」の問題だと考えられるようになってきているからである。

かつて、アルコール依存症は「心がけの問題」「意志の問題」と考えられ、どちらかというと道徳的な視点で語られることが多かった。暴力については、今でもそのようにとらえられているだろう。

しかし、いずれも、感染症や生活習慣病と同じように、予防も治療もできる「病気」だという考えが、専門家の間では主流になりつつある。

 

病気であれば、それらのリスクを診断し、リスクの高い者に対しては、予防や専門的な治療を行うようにすべきであるが、依存症も暴力も同じことが可能である。

アルコール依存症であれば、WHOが簡単なスクリーニングツールを開発しているし、暴力を振るう者に対するアセスメントのツールもたくさんある。そして、治療プログラムも数多く開発されている。

今後このような事件を根絶したいと本気で思っているのであれば、何の薬にもならない理事長講話などで誤魔化すことはやめて、きちんと専門家に頼るべきだ。

新生・ブルーバックス誕生!